2012年5月24日木曜日

脱原発へLNG輸入価格の引き下げ努力が肝要だ

引用ここから

コラム

● 山口 正康 ・ ジャーナリスト
1935年 生まれ
東京大学文学部卒、毎日新聞社入社、経済部編集委員、編集局次長などを経て、ガスエネルギー新聞常務取締役編集局長、仁愛大学教授などを歴任。
著書に「LNGチェーン物語」「新聞の歴史をたどる」など


脱原発へLNG輸入価格の引き下げ努力が肝要だ

 東大地震研究所が製作した「世界の震源分布(1977-2007)」という1枚の地図を壁に張ってよく眺めている。07年までの30年間に世界で起きたマグニチュード5以上の地震を1個1個の点で示したもので、それぞれの点は色と大きさで震源の深さと規模が分かるようになっている。これを見ると世界広しといえども、大きな地震は全て地球のプレート境界線付近で起きていることがよく分かる。特に日本は4つのプレートがほぼ1点に集まる世界的にも特異な場所にある。 地図上に描かれた日本列島は、その上に置かれた点が多すぎて姿がほとんど見えないほどになっている。こんな大地震頻発国で、未完成の技術を使った原発を稼動することがいかに危険かを思い知らされる1枚の地図である。
 そこで原発依存度を限りなくゼロに近づけようとする場合、何が一番現実的な解かというと、それは天然ガスでの代替であろう。天然ガスの可採埋蔵量は60数年分と言われてきたが、シェールガスの開発でいまや200年分を超えると言われるようになった。とすれば、あとの主な問題は原子力発電と比較した天然ガス(現実的にはLNG=液化天然ガス)発電のコストである。
 原発とLNG火力のコスト比較は幾つか公表されているが、単純に比べることは現段階では難しい。安いと言われてき脱原発へLNG輸入価格の引き下げ努力が肝要だ

 東大地震研究所が製作した「世界の震源分布(1977-2007)」という1枚の地図を壁に張ってよく眺めている。07年までの30年間に世界で起きたマグニチュード5以上の地震を1個1個の点で示したもので、それぞれの点は色と大きさで震源の深さと規模が分かるようになっている。これを見ると世界広しといえども、大きな地震は全て地球のプレート境界線付近で起きていることがよく分かる。特に日本は4つのプレートがほぼ1点に集まる世界的にも特異な場所にある。 地図上に描かれた日本列島は、その上に置かれた点が多すぎて姿がほとんど見えないほどになっている。こんな大地震頻発国で、未完成の技術を使った原発を稼動することがいかに危険かを思い知らされる1枚の地図である。
 そこで原発依存度を限りなくゼロに近づけようとする場合、何が一番現実的な解かというと、それは天然ガスでの代替であろう。天然ガスの可採埋蔵量は60数年分と言われてきたが、シェールガスの開発でいまや200年分を超えると言われるようになった。とすれば、あとの主な問題は原子力発電と比較した天然ガス(現実的にはLNG=液化天然ガス)発電のコストである。
 原発とLNG火力のコスト比較は幾つか公表されているが、単純に比べることは現段階では難しい。安いと言われてきた原発コストだが、バックエンドをいわれる後処理(使用済み燃料の再処理、放射性廃棄物、廃炉など)コストが一体どこまで計算に含められるのかが不確実だからだ。処理方法さえ開発されていないのだから、確かなコスト計算をできるはずがない。後処理の仕方次第では、原発コストは大幅に上がることにもなる。
 それを頭に置いた上で両者のコスト(円/kWh)比較を見ると、総合資源エネルギー調査会(2011年)は原子力 5~6円、LNG火力6~7円、エネルギー白書(2010年)は原子力5~6円、LNG火力7~8円としており、LNGによる原子力代替は十分現実的だと考えられる数字だ。
 LNG火力コスト引き下げを図る上での問題は、第1に日本のLNG輸入価格が米国の約3倍と異常に高いことである。もともとLNGは液化と再ガス化に巨額の設備費が掛かり、生産国から遠い日本(ないしアジア)は海上輸送費の負担があるので、パイプライン輸送主体の欧米に比べてコスト高になるのはやむを得ない。
 ここで指摘しておかなければならないのは、日本より輸入価格が高かった韓国が2011年に初めて日本を下回ったことである。世界のLNG輸入シェアを見ると、日本の40%に対して韓国は16%、生産地からの距離の遠さは同じだ。輸入量が日本の半分にも満たない韓国が輸入価格で日本を下回ったのはなぜなのか。この点を追及することで、わが国の輸入価格引き下げのヒントを得られるかもしれない。
 次の問題は総括原価主義と地域独占という日本のエネルギー企業政策が、電力・ガス会社によるコスト引き下げ努力を鈍らせたのではないかということだ。コストプラス適正利潤が認めてもらえるなら、電力、ガス会社は、あえてLNG輸入価格引き下げ努力をする必要性が低くなるのは当然だろう。そこで供給義務を果たすことに努力を集中してきたのが実態だ。日本ではLNG輸入が始まった1960年代以降、20年の長期契約を基本としてきた。 90年代後半からは契約の多様性も始まったが、長期契約を基本とすることだけは変わっていない。すべては長期の供給安定を確保するのが目的で、価格は二の次だ。加えて海外で自前の天然ガス資源を獲得することにも相当に出遅れた。
 これらを反省点として国も事業者もLNG輸入価格引き下げを図ってほしいものだ。コスト下がったLNG火力に、エネルギー節約とコージェネレーションなど効率的な手法を組み合わせる努力を進めれば、自ずと原発依存度は低下する。逆から言えば、原発を継続したいと考えるなら、LNG価格引き下げに真摯に取り組まなければいいということになる。 た原発コストだが、バックエンドをいわれる後処理(使用済み燃料の再処理、放射性廃棄物、廃炉など)コストが一体どこまで計算に含められるのかが不確実だからだ。処理方法さえ開発されていないのだから、確かなコスト計算をできるはずがない。後処理の仕方次第では、原発コストは大幅に上がることにもなる。
 それを頭に置いた上で両者のコスト(円/kWh)比較を見ると、総合資源エネルギー調査会(2011年)は原子力 5~6円、LNG火力6~7円、エネルギー白書(2010年)は原子力5~6円、LNG火力7~8円としており、LNGによる原子力代替は十分現実的だと考えられる数字だ。
 LNG火力コスト引き下げを図る上での問題は、第1に日本のLNG輸入価格が米国の約3倍と異常に高いことである。もともとLNGは液化と再ガス化に巨額の設備費が掛かり、生産国から遠い日本(ないしアジア)は海上輸送費の負担があるので、パイプライン輸送主体の欧米に比べてコスト高になるのはやむを得ない。
 ここで指摘しておかなければならないのは、日本より輸入価格が高かった韓国が2011年に初めて日本を下回ったことである。世界のLNG輸入シェアを見ると、日本の40%に対して韓国は16%、生産地からの距離の遠さは同じだ。輸入量が日本の半分にも満たない韓国が輸入価格で日本を下回ったのはなぜなのか。この点を追及することで、わが国の輸入価格引き下げのヒントを得られるかもしれない。
 次の問題は総括原価主義と地域独占という日本のエネルギー企業政策が、電力・ガス会社によるコスト引き下げ努力を鈍らせたのではないかということだ。コストプラス適正利潤が認めてもらえるなら、電力、ガス会社は、あえてLNG輸入価格引き下げ努力をする必要性が低くなるのは当然だろう。そこで供給義務を果たすことに努力を集中してきたのが実態だ。日本ではLNG輸入が始まった1960年代以降、20年の長期契約を基本としてきた。 90年代後半からは契約の多様性も始まったが、長期契約を基本とすることだけは変わっていない。すべては長期の供給安定を確保するのが目的で、価格は二の次だ。加えて海外で自前の天然ガス資源を獲得することにも相当に出遅れた。
 これらを反省点として国も事業者もLNG輸入価格引き下げを図ってほしいものだ。コスト下がったLNG火力に、エネルギー節約とコージェネレーションなど効率的な手法を組み合わせる努力を進めれば、自ずと原発依存度は低下する。逆から言えば、原発を継続したいと考えるなら、LNG価格引き下げに真摯に取り組まなければいいということになる。


引用ここまで

原文は、エネルギーフォーラム の中の
2012年4月30日付コラム【脱原発へLNG輸入価格の引き下げ努力が肝要だ】
http://www.energy-forum.co.jp/column/yamaguchi/clm120430.html
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。

ひなげし陽気』の中の「電気代値上げの裏側
の参考記事にさせていただきました。