引用ここから
2002.06.29
【ISH速報】 チェルノブイリ原発事故による放射能高汚染地域で高血圧が多発
チェルノブイリ原子力発電所の放射能漏れ事故で、高濃度の放射能汚染を受けた地域の住民では、高血圧の罹患率・新規発症率が共に高いことが明らかになった。ベラルーシVitebsk州立医科大学内科疾患部門助手のAndrei Stchastlivenko氏らが、6月27日のポスターセッションで報告した。
旧ソビエト連邦のチェルノブイリ原子力発電所で放射能漏れ事故が起こったのは1986年のこと。この事故で、237人が急性放射線障害を受け、うち28人が死亡した。その後、高濃度の放射能に汚染された地域では、特に小児の間に甲状腺癌などが多発した。
ベラルーシはチェルノブイリのすぐ西にあり、事故後に国土の多くが放射能汚染を受けた。放射能汚染度(放射線量で評価)そのものは現在、事故直後の50〜500分の1以下に低下しているが、住民の間に健康不安は続いているという。
Vitebsk州立医科大学では、こうした健康不安を受け、国民を対象とした定期的な健康調査を開始した。Stchastlivenko氏らは、 1991〜1992年に成人(18〜64歳)を対象に実施した健康調査で血圧が正常だった人を、高濃度汚染地域と放射能汚染をほとんど受けなかった地域の住民とから抽出。5年後の1996〜1997年調査でそれらの住民の血圧がどう変わったかを比較した。
当初の調査で正常血圧だった住民の年齢分布に地域差はない。しかし、5年後に高血圧を発症していた人の割合は、ほとんど汚染がない地域住民で33.3%、高濃度汚染地域の住民で 49.1%と、大きな違いがあった。より高齢で肥満、運動習慣がなく、アルコール依存がある人で高血圧を新たに発症するケースが多かったが、こうした人の割合は両地域で違いはなかった。両地域で認められた唯一の違いは、高濃度の放射能汚染を受けたかどうかだった。なお、喫煙の有無や総コレステロール、不安の強さは高血圧の発症と相関は認められなかった。
そこでStchastlivenko氏らは、放射能汚染度が異なる5地域から新たに 1526人を選び、2001年に血圧や血清脂質、生活習慣などを調べて地域の放射能汚染度別に比較した。すると、最も放射能汚染を受けなかった地域の住民と比べ、放射能汚染が最も多かった地域と、2番目に多かった地域の住民では、高血圧患者が明らかに多いことがわかった。
放射能汚染度で下から3番目までの地域では、高血圧患者の割合は45〜50%。ところが、放射能汚染度が上から2番目までの地域では、高血圧患者の割合が62〜64%となった。年齢分布や肥満者比率、喫煙率に地域差はなかったが、血清脂質に異常がある人の割合は放射能汚染度が高い地域ほど多くなった。
Stchastlivenko氏は「今回得られたデータが示すのは、高濃度の放射能汚染が起こった地域で、新たに高血圧を発症する人が多く、高血圧の罹患率そのものも高いということ。脂質代謝異常が高血圧の発症に先行して起こる可能性も示唆されている」と分析。「恐らくは健康不安を含む将来への不安がストレスとなり、脂質代謝異常を引き起こしているのだろうが、継続的に放射線を浴びたことによる影響も考えられる」と話し、今後も継続的に追跡調査を行っていきたいと述べた。
引用ここまで
原文は、日経メディカル オンライン の中の
【チェルノブイリ原発事故による放射能高汚染地域で高血圧が多発】
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/193624.html
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」
の参考記事にさせていただきました。
2011年11月7日月曜日
鼻血なんざ、何であれ鼻粘膜の異常を来せば、出る
引用ここから
鼻血
1:潜艦トマト:
2011/05/22 (Sun) 21:32:44
host:*.infoweb.ne.jp
掲示板「阿修羅」の次のスレッドに付けられたコメント
東京関東地方で鼻血の出血者が増えているという。 チュルノブイリでも少量被爆で鼻血出血、から痰、喉のイガイガなどの症状があ
http://www.asyura2.com/11/genpatu9/msg/298.html
----------------------------
59. 2011年4月16日 00:18:49: IlcbujOf4Q
耳鼻咽喉科専門医だが、鼻血なんざ、何であれ鼻粘膜の異常を来せば、出る。
花粉症などアレルギーでも出る。乾燥しただけでも出る。鼻粘膜はデリケートなんだよ。
もちろん放射性物質の粒子が呼吸によって入って来れば、吸気中のゴミの除去は鼻の基本的な生理機能であるから、鼻があれこれやって捕ってくれる。鼻のフィルター効果は重大だ。鼻呼吸すれば、口呼吸するよりも効率的に粒子を除去できるのだ。
まず、鼻から吸入された空気は、鼻腔の前方にほぼ垂直に流入し、鼻腔蓋によって80~90 度方向を変え、鼻咽頭後壁に達するまで水平に運動し、そこで急激に80~90 度方向を下向きに変える。この2 回の急激な方向の変化と気流の乱流によって5~6μm 以上の粒子はほぼ完全に除かれるのだよ。
さらに5μm 以下の粒子も加湿によって粒子が大きくなると沈着が増加する。十分に水を飲んで鼻粘液が多いほど有利なわけだ。脱水状態は良くない。うがいするくらいなら水を飲めってことだ。風邪薬や鼻炎薬で鼻水を止めるのも、よした方が良いな。
放射性物質が粘膜に付着すると、繊毛上皮の直近でβ粒子やγ線、時にα粒子を出すわけで、これは活性酸素、活性窒素、フリーラジカルなどを生じる。こいつらのせいで組織に障害が発生しそうになると生体防御機構が働くのだが、早い話が、炎症などを起こすわけだ。そのお蔭で被害は減少するわけだが、カゼなどの炎症と同じことだから、いろいろな不快感を生じて当たり前だ。
後に残るような組織障害を起こす前に、いろんな反応が起きているのだよ。骨髄抑制で血小板減少しないと鼻血が出ないナンツーことを言うのは、医師の風上にも置けない。恥ずかしいからそんなデマ言わないでくれ。
引用ここまで
原文は、掲示板:『放知技(ほうちぎ)』の中の
【鼻血】
http://grnba.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=13139446
からの抜粋です。
元は『★阿修羅♪』のコメント欄からの引用だったようです。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」
の参考記事にさせていただきました。
鼻血
1:潜艦トマト:
2011/05/22 (Sun) 21:32:44
host:*.infoweb.ne.jp
掲示板「阿修羅」の次のスレッドに付けられたコメント
東京関東地方で鼻血の出血者が増えているという。 チュルノブイリでも少量被爆で鼻血出血、から痰、喉のイガイガなどの症状があ
http://www.asyura2.com/11/genpatu9/msg/298.html
----------------------------
59. 2011年4月16日 00:18:49: IlcbujOf4Q
耳鼻咽喉科専門医だが、鼻血なんざ、何であれ鼻粘膜の異常を来せば、出る。
花粉症などアレルギーでも出る。乾燥しただけでも出る。鼻粘膜はデリケートなんだよ。
もちろん放射性物質の粒子が呼吸によって入って来れば、吸気中のゴミの除去は鼻の基本的な生理機能であるから、鼻があれこれやって捕ってくれる。鼻のフィルター効果は重大だ。鼻呼吸すれば、口呼吸するよりも効率的に粒子を除去できるのだ。
まず、鼻から吸入された空気は、鼻腔の前方にほぼ垂直に流入し、鼻腔蓋によって80~90 度方向を変え、鼻咽頭後壁に達するまで水平に運動し、そこで急激に80~90 度方向を下向きに変える。この2 回の急激な方向の変化と気流の乱流によって5~6μm 以上の粒子はほぼ完全に除かれるのだよ。
さらに5μm 以下の粒子も加湿によって粒子が大きくなると沈着が増加する。十分に水を飲んで鼻粘液が多いほど有利なわけだ。脱水状態は良くない。うがいするくらいなら水を飲めってことだ。風邪薬や鼻炎薬で鼻水を止めるのも、よした方が良いな。
放射性物質が粘膜に付着すると、繊毛上皮の直近でβ粒子やγ線、時にα粒子を出すわけで、これは活性酸素、活性窒素、フリーラジカルなどを生じる。こいつらのせいで組織に障害が発生しそうになると生体防御機構が働くのだが、早い話が、炎症などを起こすわけだ。そのお蔭で被害は減少するわけだが、カゼなどの炎症と同じことだから、いろいろな不快感を生じて当たり前だ。
後に残るような組織障害を起こす前に、いろんな反応が起きているのだよ。骨髄抑制で血小板減少しないと鼻血が出ないナンツーことを言うのは、医師の風上にも置けない。恥ずかしいからそんなデマ言わないでくれ。
引用ここまで
原文は、掲示板:『放知技(ほうちぎ)』の中の
【鼻血】
http://grnba.bbs.fc2.com/?act=reply&tid=13139446
からの抜粋です。
元は『★阿修羅♪』のコメント欄からの引用だったようです。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」
の参考記事にさせていただきました。
放射能を無毒化する技術はまだできていない
引用ここから
男性「(中略)ではちょっともう1つ、放射性物質に対する対応っていうことでですね、ま、ある意味その周りにある放射性物質、まあ放射能がなくなればですね、ま僕ら安心出来るわけですけれども。えーっと千葉県の男性から来てる質問なんですが。
え……放射性物質を中和したり消滅させたりするための研究はなされているのでしょうか。えー莫大な予算を何百年とかければ時間をかければそのような技術が開発される可能性というものはあるのでしょうか、という質問です。」
小出「はい。えー。人間が原子炉を作ったというのは1942年なんです。先の戦争中ですけれども。えー米国という国が原爆を作りたくて。原爆を作るための材料……プルトニウムというものを作るために原子炉を作ったのが初めてなんですね。
それからすでに70年経っているのですが。その原子炉を作った時から学者はみんな知っていた。つまり原子炉を作ってしまえば核分裂生成物という放射能を作ってしまうと。それを無毒化できなければ大変なことになるってことは知っていた。だから研究は始まっているのです。えー、なんとか無毒化したいという研究が始まって70年きたのですが、できないのです。」
男性「研究はされてるけどまだできてない」
小出「そうです。原理的にはできるということが分かっているのです。
え…… 例えば中世という時代があって、いわゆる科学の場では中世というのは錬金術の時代だった、のですね。亜鉛を金に変えられないかとか、錫が銀にならないかとか、いうようなことをさんざん研究しました。酸で溶かしてみたり、アルカリで溶かしてみたり、沈殿を作ってみたり、合金を作ってみたり、もうあ……こんなことまでやるかというようにもういろんなことをやった。そのいろんなことをやった結果が、現在の化け学、化学、ケミストリーというのの、まあすべての基礎を作ったというほど立派な仕事をした、その中世の錬金術は。
しかし、錬金術は敗退したんですね。亜鉛は亜鉛で金にはならない。錫は錫で銀にはならない。結局元素の変換はできないということで敗退したんですけれども。
実は錬金術は出来た、のです。なぜかといえばウランという、元素を核分裂させてしまえばもう様々な何百種類もの元素が、まあ、核種、放射性物質が出来る。
え……量が少なくていいなら金だってできるし、白金だって出来るしって。錬金術できた、んですよね。
ですから、ある元素、ある原子核を別の原子核に変える、別の元素に変えるということは、原理的にはもう出来るということがわかった、のです。
ただしそれをやろうとすると、膨大なエネルギーが必要な、まあ産み出してしまった放射能を無毒化する、別のえ……無害ということではないけどまあ害の少ない放射……核種に変換するという核変換ということが原理的にはできるということが分かっているけれども。それをやろうとすると膨大なエネルギーがまず必要になってしまう。
元々原子力発電ってのはエネルギーが欲しいということでやっているのですけれども、原子力発電で出てきたエネルギーを全て投入しても、作ったものが消えないというんだったら意味が無いと、いうことになってしまうわけだし。
え……もう1つの問題は無毒化しようとして、えー作業をすると逆に新たな放射性物質が生み出されてしまうというそういう副次的な反応がどうしても避けられないということがあって。
え……実際上できないという壁を超えられないまま、こんにちまで来ているんです。その壁は、とってもその高い……高くて厚い壁なので、え……これから超えられるというふうに私は、断言できないのですね。でも超えたいと思うし、なんとかそういう……核変換、というような技術を手に入れて私たちの世代で作ってしまった毒物を少しでも……後世の人々に負担にならないようにしたいと思いますけれども。なかなか難しそうだと思います。」
男性「なるほど……、はい。わかりました。じゃあえっとですね。(以下略)
引用ここまで
原文は、ブログ『ざまあみやがれい!』の中の
2011年11月06日18:10
【小出裕章Q&A(5)「放射性物質を消滅させる研究はなされているのか。開発される可能性は?」(ニコ生)11/5】
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65773837.html
の抜粋です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」
の参考記事にさせていただきました。
男性「(中略)ではちょっともう1つ、放射性物質に対する対応っていうことでですね、ま、ある意味その周りにある放射性物質、まあ放射能がなくなればですね、ま僕ら安心出来るわけですけれども。えーっと千葉県の男性から来てる質問なんですが。
え……放射性物質を中和したり消滅させたりするための研究はなされているのでしょうか。えー莫大な予算を何百年とかければ時間をかければそのような技術が開発される可能性というものはあるのでしょうか、という質問です。」
小出「はい。えー。人間が原子炉を作ったというのは1942年なんです。先の戦争中ですけれども。えー米国という国が原爆を作りたくて。原爆を作るための材料……プルトニウムというものを作るために原子炉を作ったのが初めてなんですね。
それからすでに70年経っているのですが。その原子炉を作った時から学者はみんな知っていた。つまり原子炉を作ってしまえば核分裂生成物という放射能を作ってしまうと。それを無毒化できなければ大変なことになるってことは知っていた。だから研究は始まっているのです。えー、なんとか無毒化したいという研究が始まって70年きたのですが、できないのです。」
男性「研究はされてるけどまだできてない」
小出「そうです。原理的にはできるということが分かっているのです。
え…… 例えば中世という時代があって、いわゆる科学の場では中世というのは錬金術の時代だった、のですね。亜鉛を金に変えられないかとか、錫が銀にならないかとか、いうようなことをさんざん研究しました。酸で溶かしてみたり、アルカリで溶かしてみたり、沈殿を作ってみたり、合金を作ってみたり、もうあ……こんなことまでやるかというようにもういろんなことをやった。そのいろんなことをやった結果が、現在の化け学、化学、ケミストリーというのの、まあすべての基礎を作ったというほど立派な仕事をした、その中世の錬金術は。
しかし、錬金術は敗退したんですね。亜鉛は亜鉛で金にはならない。錫は錫で銀にはならない。結局元素の変換はできないということで敗退したんですけれども。
実は錬金術は出来た、のです。なぜかといえばウランという、元素を核分裂させてしまえばもう様々な何百種類もの元素が、まあ、核種、放射性物質が出来る。
え……量が少なくていいなら金だってできるし、白金だって出来るしって。錬金術できた、んですよね。
ですから、ある元素、ある原子核を別の原子核に変える、別の元素に変えるということは、原理的にはもう出来るということがわかった、のです。
ただしそれをやろうとすると、膨大なエネルギーが必要な、まあ産み出してしまった放射能を無毒化する、別のえ……無害ということではないけどまあ害の少ない放射……核種に変換するという核変換ということが原理的にはできるということが分かっているけれども。それをやろうとすると膨大なエネルギーがまず必要になってしまう。
元々原子力発電ってのはエネルギーが欲しいということでやっているのですけれども、原子力発電で出てきたエネルギーを全て投入しても、作ったものが消えないというんだったら意味が無いと、いうことになってしまうわけだし。
え……もう1つの問題は無毒化しようとして、えー作業をすると逆に新たな放射性物質が生み出されてしまうというそういう副次的な反応がどうしても避けられないということがあって。
え……実際上できないという壁を超えられないまま、こんにちまで来ているんです。その壁は、とってもその高い……高くて厚い壁なので、え……これから超えられるというふうに私は、断言できないのですね。でも超えたいと思うし、なんとかそういう……核変換、というような技術を手に入れて私たちの世代で作ってしまった毒物を少しでも……後世の人々に負担にならないようにしたいと思いますけれども。なかなか難しそうだと思います。」
男性「なるほど……、はい。わかりました。じゃあえっとですね。(以下略)
引用ここまで
原文は、ブログ『ざまあみやがれい!』の中の
2011年11月06日18:10
【小出裕章Q&A(5)「放射性物質を消滅させる研究はなされているのか。開発される可能性は?」(ニコ生)11/5】
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65773837.html
の抜粋です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」
の参考記事にさせていただきました。
2011年6月17日金曜日
放射線科医による放射性ヨードI-131の解説と木下黄太氏のブログへの反論
放射能のせいで子供の鼻血が増えていると言われる件。
今の段階では鼻血を「放射線の影響と決めつける」ことも「デマと決めつける」ことも、どちらもできかねると思うんですが、結論を急ぎすぎる人は多いようです。
このお医者さまのお話はなぜかヨード131に限定されていました。
福島第一原発からは、他にもいろいろな放射性元素が飛び出しているようですし、ちょうど黄砂の季節でもありましたので、相乗効果で鼻血という症状につながった可能性があるかもしれません。
引用ここから
放射線科医による放射性ヨードI-131の解説と木下黄太氏のブログへの反論
「福島第一原発事故の影響による内部被曝?」を挙げたジャーナリスト木下黄太氏@KinositaKoutaのブログ記事(http://bit.ly/mr7Y0L)に対する、放射線科医@PKAnzug氏による放射性ヨードI-131の医療現場での詳細な使用法解説を踏まえた反論をまとめました
追記
別の方が作成されたまとめ「「原発事故の影響で鼻出血や下痢が増えた」という話への長野県在住の血液内科医による解説」 http://togetter.com/li/150517
血液という視点からのご意見です
#
もしこの甲状腺障害が本当にI-131によるものなら、I-131をどこかから調達して大量摂取させた虐待を疑います。 RT @chiba_donguri: すみません、これ→すさまじいRTされっぷりなんですけど、ありえないですよね? http://bit.ly/mr7Y0L
PKAnzug 2011/06/13 15:48:43
#
PKAnzug
あと、鼻血などの症状に関しては全くのデタラメですね。I-131をギガベクレル単位で大量投与する治療がありますが、その副作用にそれらの症状はありません。放射線性唾液腺炎ならよく出ますが。 @chiba_donguri
PKAnzug 2011/06/13 15:51:40
#
PKAnzug
さっきの件で、私がなぜ件の症状が放射線によるものではないと確信してるかについて、ちゃんと書いてなかった気がするので書いときます。まず、放射線の人体に対する影響ですが、種類別に複雑怪奇な反応を示す化学物質と違って、放射線はそんなに種類がないので、影響を比較的予測しやすいんですね。
PKAnzug 2011/06/14 00:49:54
#
PKAnzug
たとえばβ線核種であれば、種類によって体内での行き先は違っても、出すものはβ線なので、基本的にはその物質が行きやすい場所でのβ線の影響を考えればいいわけです。厳密には同じ名前でもちょっとは違うのがあったりするんですが、まあ大差はないと思って問題ないです。
PKAnzug 2011/06/14 00:50:49
#
PKAnzug
で、我々がやる甲状腺癌の治療に「I-131による残存甲状腺焼灼」ってのがあるんですが、これ、症例によっては1人の患者さんに5ギガベクレル以上、つまり5000000000ベクレル以上のI-131を投与するんです。これは患者さん自身が放射性物質として法的規制を受けるレベルのすごい量。
PKAnzug 2011/06/14 00:51:03
#
PKAnzug
I-131(放射性ヨード)は皆さんご存知の通り甲状腺によく集まります。なので、もし甲状腺が結構残ってたら結構腫れたりもしますし、残存甲状腺はβ線で焼き尽くす感じの、結構荒っぽい治療です。甲状腺ついでに唾液腺にも多少集まっちゃうので、副作用の放射線性唾液腺炎はかなりの高頻度で出る。
PKAnzug 2011/06/14 00:52:37
#
PKAnzug
ただし、この治療によって鼻血が出たり下痢になったりすることはありません。あるとしたら別の理由が必ずある。バセドウ病のI-131治療では下痢になることもありますが、これは甲状腺機能亢進症の症状が一時的に悪化することが原因で、やはり放射線以外の理由が明確に存在します。
PKAnzug 2011/06/14 00:53:02
#
PKAnzug
「だってヨードは甲状腺に集まるんだから、集まった場所以外に症状が出ないのは当然だろ」そういう意見があるかもしれません。しかしこれも明確な理由をつけて「違う」と言えます。
PKAnzug 2011/06/14 00:53:14
#
PKAnzug
http://bit.ly/lPbrqJ ここに、「I-131全身シンチ」という画像があります。黒いのがI-131が集まってる部位。この人は肺転移や頚部リンパ節転移があるので、それらの部位にもハッキリ集まっています。注目してほしいのは、何となく全身がボンヤリ見えてること。
PKAnzug 2011/06/14 00:53:23
#
PKAnzug
これは、甲状腺や甲状腺癌の転移だけでなく全身にある程度はI-131が遊びにいってしまうことを意味します。全体からすると僅かな量ですが、そもそもの投与量がとんでもないので、これでも現状で意図せず環境から摂取して全身に回りうる量とは比較にならないほど多いんですね。
PKAnzug 2011/06/14 00:53:41
#
PKAnzug
で、繰り返しますが、こういう集積をする患者さんにも下痢とか鼻血なんかは出ません。もうお分かりでしょう。現状で環境からの摂取で受けうる程度の内部被曝なんて、別に前例のない事態などではなく、我々から見たら散々既出の事例なんです。
PKAnzug 2011/06/14 00:53:59
#
PKAnzug
では、子供ならどうか。子供の放射線感受性が大人より高いのは事実です。なので、放射性物質の投与を出来れば避けたいのは事実。ただ、甲状腺癌って子供でも見つかることがあって、私の経験では、9歳の子に残存甲状腺焼灼を施行したことがあります。結果、唾液腺炎以外の症状は出ませんでした。
PKAnzug 2011/06/14 00:54:22
#
PKAnzug
また、治療量投与の経験は少なくとも、核医学の検査自体は子供に行う場合も結構あります。これもI-131同様にある程度全身に分布しますし、やはり現状で環境から摂取するよりは間違いなく多くの線量を浴びる計算ですが、核医学検査で副作用というのはほぼ出ないと思ってもらっていいです。
PKAnzug 2011/06/14 00:54:35
#
PKAnzug
そもそも、大人で前述の治療量が大丈夫で、子供は現状の環境から摂取する量で鼻血下痢というのは、感覚的には「大人は鋼鉄の装甲だけど、子供の装甲はティッシュ1枚」くらい非現実的な差ですんで、満面の笑顔で「ねーよw」って言い放ってもいいです。
PKAnzug 2011/06/14 00:54:49
#
PKAnzug
ということで、「関東で内部被曝による鼻血や下痢が!」を全力で否定するのは、それくらい明確な根拠があるわけです。一方で、それが放射線性のものであることの根拠は、聞いても教えてくれませんでした。私の見立てでは、多分これ。→ http://bit.ly/eKyveh
PKAnzug 2011/06/14 00:55:02
#
PKAnzug
私に言えるのは、鼻血でも下痢でも、あんなのを真に受けるんじゃなくて、軽症なら様子見、重そうなら医者に診せるべきってことです。様々な原因で出うる症状なので、放射線のせいと思い込んで対処を誤ったら、その方が遥かに危険です。劣悪な環境下では、妙な感染症が出ていても不思議ではないわけで。
PKAnzug 2011/06/14 00:55:13
#
PKAnzug
この「デマ拡散によるリスク拡大の可能性」を認めるかどうかは、彼の良心を測る最後の砦のようなものだったわけですが、彼は私が明示したこれすらも受け流しました。正直、勘違いするのも理解力が粗末なのもある意味仕方がないですが、ここだけはジャーナリスト云々以前に人として絶対に許せません。
PKAnzug 2011/06/14 00:56:00
引用ここまで
原文は、togetterの
「放射線科医による放射性ヨードI-131の解説と木下黄太氏のブログへの反論」
http://togetter.com/li/149186
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」の参考記事にさせていただきました。
今の段階では鼻血を「放射線の影響と決めつける」ことも「デマと決めつける」ことも、どちらもできかねると思うんですが、結論を急ぎすぎる人は多いようです。
このお医者さまのお話はなぜかヨード131に限定されていました。
福島第一原発からは、他にもいろいろな放射性元素が飛び出しているようですし、ちょうど黄砂の季節でもありましたので、相乗効果で鼻血という症状につながった可能性があるかもしれません。
引用ここから
放射線科医による放射性ヨードI-131の解説と木下黄太氏のブログへの反論
「福島第一原発事故の影響による内部被曝?」を挙げたジャーナリスト木下黄太氏@KinositaKoutaのブログ記事(http://bit.ly/mr7Y0L)に対する、放射線科医@PKAnzug氏による放射性ヨードI-131の医療現場での詳細な使用法解説を踏まえた反論をまとめました
追記
別の方が作成されたまとめ「「原発事故の影響で鼻出血や下痢が増えた」という話への長野県在住の血液内科医による解説」 http://togetter.com/li/150517
血液という視点からのご意見です
#
もしこの甲状腺障害が本当にI-131によるものなら、I-131をどこかから調達して大量摂取させた虐待を疑います。 RT @chiba_donguri: すみません、これ→すさまじいRTされっぷりなんですけど、ありえないですよね? http://bit.ly/mr7Y0L
PKAnzug 2011/06/13 15:48:43
#
PKAnzug
あと、鼻血などの症状に関しては全くのデタラメですね。I-131をギガベクレル単位で大量投与する治療がありますが、その副作用にそれらの症状はありません。放射線性唾液腺炎ならよく出ますが。 @chiba_donguri
PKAnzug 2011/06/13 15:51:40
#
PKAnzug
さっきの件で、私がなぜ件の症状が放射線によるものではないと確信してるかについて、ちゃんと書いてなかった気がするので書いときます。まず、放射線の人体に対する影響ですが、種類別に複雑怪奇な反応を示す化学物質と違って、放射線はそんなに種類がないので、影響を比較的予測しやすいんですね。
PKAnzug 2011/06/14 00:49:54
#
PKAnzug
たとえばβ線核種であれば、種類によって体内での行き先は違っても、出すものはβ線なので、基本的にはその物質が行きやすい場所でのβ線の影響を考えればいいわけです。厳密には同じ名前でもちょっとは違うのがあったりするんですが、まあ大差はないと思って問題ないです。
PKAnzug 2011/06/14 00:50:49
#
PKAnzug
で、我々がやる甲状腺癌の治療に「I-131による残存甲状腺焼灼」ってのがあるんですが、これ、症例によっては1人の患者さんに5ギガベクレル以上、つまり5000000000ベクレル以上のI-131を投与するんです。これは患者さん自身が放射性物質として法的規制を受けるレベルのすごい量。
PKAnzug 2011/06/14 00:51:03
#
PKAnzug
I-131(放射性ヨード)は皆さんご存知の通り甲状腺によく集まります。なので、もし甲状腺が結構残ってたら結構腫れたりもしますし、残存甲状腺はβ線で焼き尽くす感じの、結構荒っぽい治療です。甲状腺ついでに唾液腺にも多少集まっちゃうので、副作用の放射線性唾液腺炎はかなりの高頻度で出る。
PKAnzug 2011/06/14 00:52:37
#
PKAnzug
ただし、この治療によって鼻血が出たり下痢になったりすることはありません。あるとしたら別の理由が必ずある。バセドウ病のI-131治療では下痢になることもありますが、これは甲状腺機能亢進症の症状が一時的に悪化することが原因で、やはり放射線以外の理由が明確に存在します。
PKAnzug 2011/06/14 00:53:02
#
PKAnzug
「だってヨードは甲状腺に集まるんだから、集まった場所以外に症状が出ないのは当然だろ」そういう意見があるかもしれません。しかしこれも明確な理由をつけて「違う」と言えます。
PKAnzug 2011/06/14 00:53:14
#
PKAnzug
http://bit.ly/lPbrqJ ここに、「I-131全身シンチ」という画像があります。黒いのがI-131が集まってる部位。この人は肺転移や頚部リンパ節転移があるので、それらの部位にもハッキリ集まっています。注目してほしいのは、何となく全身がボンヤリ見えてること。
PKAnzug 2011/06/14 00:53:23
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PKAnzug
これは、甲状腺や甲状腺癌の転移だけでなく全身にある程度はI-131が遊びにいってしまうことを意味します。全体からすると僅かな量ですが、そもそもの投与量がとんでもないので、これでも現状で意図せず環境から摂取して全身に回りうる量とは比較にならないほど多いんですね。
PKAnzug 2011/06/14 00:53:41
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PKAnzug
で、繰り返しますが、こういう集積をする患者さんにも下痢とか鼻血なんかは出ません。もうお分かりでしょう。現状で環境からの摂取で受けうる程度の内部被曝なんて、別に前例のない事態などではなく、我々から見たら散々既出の事例なんです。
PKAnzug 2011/06/14 00:53:59
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PKAnzug
では、子供ならどうか。子供の放射線感受性が大人より高いのは事実です。なので、放射性物質の投与を出来れば避けたいのは事実。ただ、甲状腺癌って子供でも見つかることがあって、私の経験では、9歳の子に残存甲状腺焼灼を施行したことがあります。結果、唾液腺炎以外の症状は出ませんでした。
PKAnzug 2011/06/14 00:54:22
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PKAnzug
また、治療量投与の経験は少なくとも、核医学の検査自体は子供に行う場合も結構あります。これもI-131同様にある程度全身に分布しますし、やはり現状で環境から摂取するよりは間違いなく多くの線量を浴びる計算ですが、核医学検査で副作用というのはほぼ出ないと思ってもらっていいです。
PKAnzug 2011/06/14 00:54:35
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PKAnzug
そもそも、大人で前述の治療量が大丈夫で、子供は現状の環境から摂取する量で鼻血下痢というのは、感覚的には「大人は鋼鉄の装甲だけど、子供の装甲はティッシュ1枚」くらい非現実的な差ですんで、満面の笑顔で「ねーよw」って言い放ってもいいです。
PKAnzug 2011/06/14 00:54:49
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PKAnzug
ということで、「関東で内部被曝による鼻血や下痢が!」を全力で否定するのは、それくらい明確な根拠があるわけです。一方で、それが放射線性のものであることの根拠は、聞いても教えてくれませんでした。私の見立てでは、多分これ。→ http://bit.ly/eKyveh
PKAnzug 2011/06/14 00:55:02
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PKAnzug
私に言えるのは、鼻血でも下痢でも、あんなのを真に受けるんじゃなくて、軽症なら様子見、重そうなら医者に診せるべきってことです。様々な原因で出うる症状なので、放射線のせいと思い込んで対処を誤ったら、その方が遥かに危険です。劣悪な環境下では、妙な感染症が出ていても不思議ではないわけで。
PKAnzug 2011/06/14 00:55:13
#
PKAnzug
この「デマ拡散によるリスク拡大の可能性」を認めるかどうかは、彼の良心を測る最後の砦のようなものだったわけですが、彼は私が明示したこれすらも受け流しました。正直、勘違いするのも理解力が粗末なのもある意味仕方がないですが、ここだけはジャーナリスト云々以前に人として絶対に許せません。
PKAnzug 2011/06/14 00:56:00
引用ここまで
原文は、togetterの
「放射線科医による放射性ヨードI-131の解説と木下黄太氏のブログへの反論」
http://togetter.com/li/149186
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」の参考記事にさせていただきました。
「原発事故の影響で鼻出血や下痢が増えた」という話への長野県在住の血液内科医による解説
今の段階では鼻血を「放射線の影響と決めつける」ことも「デマと決めつける」ことも、どちらもできかねると思うんですが、結論を急ぎすぎる人は多いようです。
「出血性の病気を普段診ている」という医師がやはり、低線量放射線での鼻血も下痢もデマとおっしゃってるんですが、納得できる解説とは思えませんでした。
鼻血については、血が出てくるきっかけに触れず、出血が止まるか止まらないかという機能のお話に留まってますし、下痢については放射線で腸の粘膜がダメージを受けたばあいという観点のみで、たとえば人体のDNA損傷ではなく腸内細菌叢が変化したことによる下痢の可能性などには言及していませんので…。
引用ここから
「原発事故の影響で鼻出血や下痢が増えた」という話への長野県在住の血液内科医による解説
「出血性の病気を普段診ている立場」の医師によるコメント。元々素人目でも「出血するくらいなら病院に駆け込むのが最優先事項なのに、そういう話はとんと耳にしない」という疑問はありましたが、やはり専門家による話は説得力があります。
●追加解説:
「鼻血と原発と「ジャーナリスト」と専門家と」( http://www.jgnn.net/ls/2011/06/post-2235.html )でちょいとまとめましたが、別の方のまとめ 「放射線科医による放射性ヨードI-131の解説と木下黄太氏のブログへの反論」 http://togetter.com/li/149186 と合わせて読むと、さらに「色々と」理解が深まると思います。
#
原発事故の影響で鼻出血や下痢が増えたというデマに対しては、すでに決定的な反論が出ているんだけど、 http://bit.ly/kS3h2v 白血病とか血小板減少症とか、出血性の病気を普段診ている立場からコメントしておく。
ymori117 2011/06/17 02:03:19
#
ymori117
まず、放射線で出血や下痢が起こる仕組みから。出血は、放射線によって血液細胞のひとつ血小板が作れなくなるから。血液細胞は血液中を流れる細胞で、白血球・赤血球・血小板がある。白血球は身体に入ってきた細菌を殺して体を守る免疫細胞。赤血球は肺から取り込んだ酸素を全身に運ぶ。
ymori117 2011/06/17 02:06:28
#
ymori117
血小板は出血を止める働きをする。出血は血管が破れて血液が漏れることだけど、血小板が破れたところにびっしり張り付いて穴をふさぎ、出血を止める。だから血小板がなくなると出血が止まりにくくなる。ただし、相当ひどく減らないと、出血症状は起こってこない。
ymori117 2011/06/17 02:10:39
#
ymori117
血小板数の標準値は血液1マイクロリットル(1mmの立方体の体積)あたり15万~35万。これが2~3万くらいに減ってくると、出血が止まりにくい症状が出てくる。ただこれも個人差があって、何ヶ月もかけて減少すると体のほうが慣れるので、1万くらいでも出血しない。
ymori117 2011/06/17 02:13:15
#
ymori117
血小板減少による出血症状は全身に起こる。多くは外力のかかる脚(特にすね周囲)に始まり、手の周囲、胸・腹に点状出血(細かい青あざ)や皮下出血(大きい青あざ)が徐々に増えてくる。鼻出血や歯肉出血が出てくるのは最後のほうだ。だから、鼻出血「だけ」なら他の原因を考えるのが先だ。
ymori117 2011/06/17 02:16:18
#
ymori117
放射線による血小板減少は、一緒に白血球・赤血球の減少も起こしてくる。これら血液細胞は、すべて造血幹細胞という大元の細胞で作られていて、強力な放射線はこの造血幹細胞にダメージを与えるからだ。そして、このダメージは少量の内部被曝ではなく、強力な外部被曝で起こる。
ymori117 2011/06/17 02:19:20
#
ymori117
放射線による細胞のダメージはDNA損傷だが、細胞にはこの損傷を修復する機能がある。だから、血小板がほとんどなくなってしまうくらいのダメージが造血幹細胞に入るのは「大量の放射線が」「一気に」当たった場合だ。具体的には2グレイ (≒2000mシーベルト)以上の放射線量。
ymori117 2011/06/17 02:22:33
#
ymori117
だから、鼻出血が起こるくらいの血小板減少をきたす被曝は、起こるとしても原発の事故現場くらいなものだ。マイクロシーベルト単位の放射性物質が検出されたのされないのという、そんな弱い線量では起こりえない。
ymori117 2011/06/17 02:25:39
#
ymori117
被曝で造血幹細胞に深刻なダメージが起こった場合、もうひとつ問題になるのは白血球減少だ。細菌やウィルスを身体から守る細胞がごっそり減ってしまうので、感染に弱くなる。口の中や腸の中に住んでいて、普段は人間と共存している細菌が血液中に入って重症重症感染を起こしてきたりする。
ymori117 2011/06/17 02:28:44
#
ymori117
だから、「放射線による影響で鼻出血」ってのは、大量の放射線を一気に浴びた場合に起こることで、全身の出血症状が先に起こってきて、多くは重症感染も一緒に起こってくる、きわめて厳しい状態のことを指す。日本においては、原爆の被爆者と、 1999年の東海村臨界事故の被害者2人だけだ。
ymori117 2011/06/17 02:32:32
#
ymori117
次に下痢が起こる仕組み。放射線で腸の壁をかたちづくる粘膜がダメージを受けるから。粘膜細胞は数日で入れ替わっているんだけど、放射線で粘膜細胞のDNAが損傷を受けて次世代の細胞を作れなくなる。数日経つと旧世代の粘膜細胞がはがれ落ちて、腸の壁の中身がむき出しになる。
ymori117 2011/06/17 02:36:53
#
ymori117
むき出しになった壁の構造物から、血管からしみでた水分や、壊れた血管からの出血が起こって下痢になる。血小板が減って出血は止まりにくいし、白血球がなくて細菌感染でさらに下痢が悪くなるので、これも非常に深刻な病状だ。「ちょっと心配だから病院へ」なんてレベルの人には縁のない話。
ymori117 2011/06/17 02:39:23
#
ymori117
これが起こったのが、東海村臨界事故の被害者3人のうち、一番重症だった方。経過は当時の全国骨髄バンク推進連絡協議会誌に詳細に記載されている。 http://goo.gl/BrUD1
ymori117 2011/06/17 02:41:11
#
ymori117
なので、下痢「だけ」なら、やっぱり他の原因を考えるのが先だ。
ymori117 2011/06/17 02:43:31
#
ymori117
そして、白血球・赤血球・血小板が減る病気は放射線以外にもあって、急性白血病とか、重症再生不良性貧血とか、特発性血小板減少性紫斑病(これは血小板のみ)などがそうだ。人口10万人あたり年間数人しか起こらない病気だが、それでもこの50年で 2人しか起こらなかった高線量被曝よりは多い。
ymori117 2011/06/17 02:47:01
#
ymori117
そんなわけで、「福島原発事故の影響で鼻出血と下痢が増えた」なんて話をきいても、「どうやったらそんなことが起こるんだい???」と思ってしまう。(おわり)
ymori117 2011/06/17 02:48:15
#
ymori117
まずは「本当に」鼻出血が増えているのか、確認するのが先決かと。 RT @amusn: では今の多人数の鼻出血の原因は??
ymori117 2011/06/17 03:03:01
引用ここまで
原文は、togetterの
「原発事故の影響で鼻出血や下痢が増えた」という話への長野県在住の血液内科医による解説
http://togetter.com/li/150517
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」の参考記事にさせていただきました。
「出血性の病気を普段診ている」という医師がやはり、低線量放射線での鼻血も下痢もデマとおっしゃってるんですが、納得できる解説とは思えませんでした。
鼻血については、血が出てくるきっかけに触れず、出血が止まるか止まらないかという機能のお話に留まってますし、下痢については放射線で腸の粘膜がダメージを受けたばあいという観点のみで、たとえば人体のDNA損傷ではなく腸内細菌叢が変化したことによる下痢の可能性などには言及していませんので…。
引用ここから
「原発事故の影響で鼻出血や下痢が増えた」という話への長野県在住の血液内科医による解説
「出血性の病気を普段診ている立場」の医師によるコメント。元々素人目でも「出血するくらいなら病院に駆け込むのが最優先事項なのに、そういう話はとんと耳にしない」という疑問はありましたが、やはり専門家による話は説得力があります。
●追加解説:
「鼻血と原発と「ジャーナリスト」と専門家と」( http://www.jgnn.net/ls/2011/06/post-2235.html )でちょいとまとめましたが、別の方のまとめ 「放射線科医による放射性ヨードI-131の解説と木下黄太氏のブログへの反論」 http://togetter.com/li/149186 と合わせて読むと、さらに「色々と」理解が深まると思います。
#
原発事故の影響で鼻出血や下痢が増えたというデマに対しては、すでに決定的な反論が出ているんだけど、 http://bit.ly/kS3h2v 白血病とか血小板減少症とか、出血性の病気を普段診ている立場からコメントしておく。
ymori117 2011/06/17 02:03:19
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ymori117
まず、放射線で出血や下痢が起こる仕組みから。出血は、放射線によって血液細胞のひとつ血小板が作れなくなるから。血液細胞は血液中を流れる細胞で、白血球・赤血球・血小板がある。白血球は身体に入ってきた細菌を殺して体を守る免疫細胞。赤血球は肺から取り込んだ酸素を全身に運ぶ。
ymori117 2011/06/17 02:06:28
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ymori117
血小板は出血を止める働きをする。出血は血管が破れて血液が漏れることだけど、血小板が破れたところにびっしり張り付いて穴をふさぎ、出血を止める。だから血小板がなくなると出血が止まりにくくなる。ただし、相当ひどく減らないと、出血症状は起こってこない。
ymori117 2011/06/17 02:10:39
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ymori117
血小板数の標準値は血液1マイクロリットル(1mmの立方体の体積)あたり15万~35万。これが2~3万くらいに減ってくると、出血が止まりにくい症状が出てくる。ただこれも個人差があって、何ヶ月もかけて減少すると体のほうが慣れるので、1万くらいでも出血しない。
ymori117 2011/06/17 02:13:15
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ymori117
血小板減少による出血症状は全身に起こる。多くは外力のかかる脚(特にすね周囲)に始まり、手の周囲、胸・腹に点状出血(細かい青あざ)や皮下出血(大きい青あざ)が徐々に増えてくる。鼻出血や歯肉出血が出てくるのは最後のほうだ。だから、鼻出血「だけ」なら他の原因を考えるのが先だ。
ymori117 2011/06/17 02:16:18
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ymori117
放射線による血小板減少は、一緒に白血球・赤血球の減少も起こしてくる。これら血液細胞は、すべて造血幹細胞という大元の細胞で作られていて、強力な放射線はこの造血幹細胞にダメージを与えるからだ。そして、このダメージは少量の内部被曝ではなく、強力な外部被曝で起こる。
ymori117 2011/06/17 02:19:20
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ymori117
放射線による細胞のダメージはDNA損傷だが、細胞にはこの損傷を修復する機能がある。だから、血小板がほとんどなくなってしまうくらいのダメージが造血幹細胞に入るのは「大量の放射線が」「一気に」当たった場合だ。具体的には2グレイ (≒2000mシーベルト)以上の放射線量。
ymori117 2011/06/17 02:22:33
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ymori117
だから、鼻出血が起こるくらいの血小板減少をきたす被曝は、起こるとしても原発の事故現場くらいなものだ。マイクロシーベルト単位の放射性物質が検出されたのされないのという、そんな弱い線量では起こりえない。
ymori117 2011/06/17 02:25:39
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ymori117
被曝で造血幹細胞に深刻なダメージが起こった場合、もうひとつ問題になるのは白血球減少だ。細菌やウィルスを身体から守る細胞がごっそり減ってしまうので、感染に弱くなる。口の中や腸の中に住んでいて、普段は人間と共存している細菌が血液中に入って重症重症感染を起こしてきたりする。
ymori117 2011/06/17 02:28:44
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ymori117
だから、「放射線による影響で鼻出血」ってのは、大量の放射線を一気に浴びた場合に起こることで、全身の出血症状が先に起こってきて、多くは重症感染も一緒に起こってくる、きわめて厳しい状態のことを指す。日本においては、原爆の被爆者と、 1999年の東海村臨界事故の被害者2人だけだ。
ymori117 2011/06/17 02:32:32
#
ymori117
次に下痢が起こる仕組み。放射線で腸の壁をかたちづくる粘膜がダメージを受けるから。粘膜細胞は数日で入れ替わっているんだけど、放射線で粘膜細胞のDNAが損傷を受けて次世代の細胞を作れなくなる。数日経つと旧世代の粘膜細胞がはがれ落ちて、腸の壁の中身がむき出しになる。
ymori117 2011/06/17 02:36:53
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ymori117
むき出しになった壁の構造物から、血管からしみでた水分や、壊れた血管からの出血が起こって下痢になる。血小板が減って出血は止まりにくいし、白血球がなくて細菌感染でさらに下痢が悪くなるので、これも非常に深刻な病状だ。「ちょっと心配だから病院へ」なんてレベルの人には縁のない話。
ymori117 2011/06/17 02:39:23
#
ymori117
これが起こったのが、東海村臨界事故の被害者3人のうち、一番重症だった方。経過は当時の全国骨髄バンク推進連絡協議会誌に詳細に記載されている。 http://goo.gl/BrUD1
ymori117 2011/06/17 02:41:11
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ymori117
なので、下痢「だけ」なら、やっぱり他の原因を考えるのが先だ。
ymori117 2011/06/17 02:43:31
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ymori117
そして、白血球・赤血球・血小板が減る病気は放射線以外にもあって、急性白血病とか、重症再生不良性貧血とか、特発性血小板減少性紫斑病(これは血小板のみ)などがそうだ。人口10万人あたり年間数人しか起こらない病気だが、それでもこの50年で 2人しか起こらなかった高線量被曝よりは多い。
ymori117 2011/06/17 02:47:01
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ymori117
そんなわけで、「福島原発事故の影響で鼻出血と下痢が増えた」なんて話をきいても、「どうやったらそんなことが起こるんだい???」と思ってしまう。(おわり)
ymori117 2011/06/17 02:48:15
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ymori117
まずは「本当に」鼻出血が増えているのか、確認するのが先決かと。 RT @amusn: では今の多人数の鼻出血の原因は??
ymori117 2011/06/17 03:03:01
引用ここまで
原文は、togetterの
「原発事故の影響で鼻出血や下痢が増えた」という話への長野県在住の血液内科医による解説
http://togetter.com/li/150517
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」の参考記事にさせていただきました。
『原子力が答えではない』要点翻訳(2) 鼻血・下痢・発疹は被曝症状、スリーマイルでも隠ぺいされたα線・β線核種、IAEAとWHOの癒着で世界はおかしくなった
引用ここから
『原子力が答えではない』要点翻訳(2) 鼻血・下痢・発疹は被曝症状、スリーマイルでも隠ぺいされたα線・β線核種、IAEAとWHOの癒着で世界はおかしくなった
ヘレン・カルディコット医師『原子力が答えではない』(2006年出版)【Helen Caldicott, Nuclear Power Is Not The Answer】の要点和訳の第二弾です。
第1弾の要点は、原子力というものは事故がなくても労働者・住民・地球生命全体に多大な犠牲を強いるものだということでした(第一弾はこちらです)。第2弾は事故(1979年スリーマイルと1986年チェルノブイリ)の際に情報操作がされてきた事実の告発が中心です。特に米国スリーマイル島原発事故については、カルディコット医師自身が現地で医療活動にたずさわった経験から、御用学者の「想定」に基づく「理論」とは比べものにならないほど説得力のある臨床現場での事実が語られています。
カルディコット氏は小児科医です。1977年にハーバード医科大学で教え、1979年のスリーマイル事故をきっかけに脱原発を目指して活動をはじめ、1985年にノーベル平和賞を受賞した核戦争防止国際医師会議(IPPNW)にかかわり、自身もノーベル平和賞に個人ノミネートされています。(Wikipedia)
以下、中鬼が特に驚いた事実をまとめてみました。
<スリーマイル島原発災害について>
1 大嘘だった「原発事故が起こる確率」
2 スリーマイル原発災害でも隠ぺいされたアルファ線・ベータ線核種
3 公表値の4000倍の放射性物質が放出されていた
4 住民に知らされなかった放射能放出:裏で当たり前のようにベントしていた!
5 鼻血、下痢、吐き気、赤い発疹などは大量被曝の症状
6 政治的に隠ぺいされた臨床事実
7 ハーシーズ・チョコレートの犯罪的ビジネス
8 「科学」は金で買収された:こうして御用学者の時代が築かれた
<チェルノブイリ原発災害について>
9 IAEAがWHOを手なずけたことで世界はおかしくなった
10 フランスでもホットスポットがあったのに隠ぺいされた
11 数千キロ離れた低濃度汚染地域でも被害は多発している
12 原発災害は数十年たっても終わらない
--------------------------------------------------
<スリーマイル島原発災害について>
1 大嘘だった「原発事故が起こる確率」
→スリーマイル事故前までは原子力産業はメルトダウンが起こるのは、駐車場で雷にうたれるのと同じくらい低い確率だと断言していた。
※大鬼注:NRCの1975年報告ではメルトダウン事故の確率は「2万年に1回」程度とされていた。日本の御用学者はチェルノブイリ後も何万年に一度とか大隕石が落ちる確率などと言っていた。現実は過去30-40年間に3回もの重大事故が発生した。3・11後のニュースでは、米国テネシー渓谷開発公社が米アラバマ州にあるブラウンズフェリー原発について「100万年に1度の洪水」にも耐えるとしたがその1ヶ月後に通常の竜巻で緊急停止・非常事態に陥った。
2 スリーマイル原発災害でも隠ぺいされたアルファ線・ベータ線核種
→沢山の種類の放射性物質が放出されたと分かっていたのに、政府と原子力産業は数種類の物質しか検査・公表をしなかった。そしてその後も正式な発表として多くの放射性物質の数値が世に出てくることはなかった。
→ガンマ線を測る機械は設置されたものの、それらの機械は高濃度の放射線を測れるものではなかったために多くが「計器故障」という結果になった。
→気体化された放射性物質の測定は事故発生から8日たってからやっと実施された。
→α線とβ線は公式には一度も測られることがなかった。
3 公表値の4000倍の放射性物質が放出されていた
→ そんな中で原子力産業はヨウ素の総排出量は13から17キューリー(48万から63万ベクレル)と、気体化したクリプトン、キセノン、アルゴンの総排出量240万から1300万キューリー(888億から4800億ベクレル)と発表した。しかしこれに対して元NRCの委員長ジョセフ・ヘンドリー(Joseph Hendrie)は、「私たちは目が見えないまま仕事をしているのと同じようなもんだ。州知事の出す情報は曖昧だし、私が持っている情報は無いのにも等しい。何人かの目の見えない人達がヨロヨロと不安定に決断をしようとしているだけだ。」と公表されたデータに対して信頼性が乏しいとの解釈をした。その他の専門家達も上記の数値について「甚だしく控えめな数値だ」と批難している。
→ 「(放射線の健康に対する影響を扱う)保健物理学の父」として知られているカール・モルガン医師(Dr. Karl Morgan)の1982年の調査ではヨウ素の総排出量は64000キューリー(約24億ベクレル)で気体化した物質の総排出量は4500万キューリー(1.665兆ベクレル)としている。
4 住民に知らされなかった放射能放出:裏で当たり前のようにベントしていた!
→ 放射能に関した病気を専門とするカール・ジョンソン医師(Dr. Carl Johnson)は、燃料が溶けたということは、ほぼ確実にプルトニウム、ストロンチウム、アメリシウムも放出されているという事になるとし、NRCにそれらの物質の調査を依頼したが断られた。
→ 事故発生から3日後に約480万リットルの汚染水が、NRCの許可なしにサスケハナ川に流出させられた。この川は漁業な盛んな海岸線につながっていて、ロブスター、蟹、魚など多くの魚介類を汚染したにも関わらず、一般市民にはその危険性について何も通達はなかった。
→ その後も秘密の放射能放出は続く。例えば1980年6月には大量のクリプトン85が事故を起こした原子炉から意図的に外にベントされている。更に 1990年の11月には230万ガロン(870万リットル)ものトリチウムを含んだ汚染水が意図的に蒸気に変えられてベントされている。
※大鬼注:福島第一のベントは「世界で前例のないこと」ではなかった・・黙ってベントするのは殺人ですね。
5 鼻血、下痢、吐き気、赤い発疹などは大量被曝の症状
→ 事故発生後州知事から避難命令がでる以前に8km圏内の5%から6%の住民は自主避難をした。二日後の3月30日に当時のソーンバーグ知事 (Thornburgh) は8km圏内にいる子どもと妊婦に避難命令を出し、約14万人の人達が避難をした。
→ 事故の1週間後にカルディコット医師はペンシルバニアのハリスバーグ(スリーマイル原発から一番近い都市)に行き、避難してきた人達に講演をしたりや質問を受けたりしていた。そこで、避難してきた人達がみせていた体調の状態は、チェルノブイリ事故10年後にプリペットという町の住民が訴えていた症状ととてもよく似ていた。これらの症状は、めまい、嘔吐、下痢、鼻血、口の中に金属の味、脱毛、皮膚の赤い発疹で、これは典型的な急性放射線障害の兆候である。
※大鬼注:こうした症状がみられた方は病院に行きカルテに記録を保存しておくことをお勧めします。
6 隠ぺいされた臨床事実
→ 当時のペンシルバニア州の衛生局長であったゴードン・マクレウド医師(Dr. Gordon McLeod)は、事故前の9ヶ月間に甲状腺機能低下が認められて生まれきた赤ちゃんは9人だったのが、事故の9ヶ月後にはそれが20人になっていたという事実をつきとめた。このデータをもとにスリーマイル事故との因果関係を示す研究が求められたが、それは行われず、このゴードン・マクレウド医師は着任から6ヶ月あまりでクビにされた。
7 ハーシーズ・チョコレートの犯罪的ビジネス
→ ハーシーズは汚染された牛乳であると知っていながらそれを使用してチョコレート製品を作り続けた。
→ ハーシーズは自社が取り扱う牛乳に汚染はないとしたが、おかしなことに事故後には牛乳を通常より多く粉末状にしてヨウ素が消滅するまで保存していた。それでもヨウ素以外の大多数の放射性物質は残留しつづけるのだが。
→ ヨウ素やセシウムが放出されたということは、ストロンチウム90、プルトニウム、アメリシウム等の放射性物質も拡散したということ。それなのにハーシーズは何も検知されなかったとして従来通りその土地の牛乳を使っていた。
8 「科学」は金で買収された:こうして御用学者の時代が築かれた
→ コロンビア大学がスリーマイルの事故に関して二つの研究を発表した。そこには被ばく量とホジキン病や肺がんなどの様々な病気との因果関係が導き出されていたのだが(しかも政府や原子力産業が発表した「甚だしく控えめな数値」を使って!)、サンプルの数が少ないとしてその因果関係は説明できないとしたばかりか、何の科学的根拠もないまま発がん率の増加はストレスによるものとの結論にした。
→ 公式に認められた研究はTMI Public Health Fundという基金から研究費がでていたのだが、その基金は原子力産業から出ていた。そのため、まともな研究をしようとしたグループは全てその選考から外され、それでも研究を続けたとしても学会でバカにされて終わってしまうというとんでもない事態が続いた。
→ このような隠蔽体質、そして情報を軽くしたり後出しするやり方は核実験時代から米国で続けられていた。50年60年代の核実験時代には、そのような実験が健康に害は及ぼさないと断言されていた。1997年にやっと発表された米国立がん研究所(National Cancer Institute)の研究によると、212,000人のアメリカ人が核実験の影響で癌を発病した、もしくはその後発病した。しかしこの研究自体も完全ではなく、NCIの数値はストロンチウム90,セシウム137,そしてプルトニウムなどを考慮せずに計算されていた。
<チェルノブイリ原発災害について>
9 IAEAがWHOを手なずけたことで世界はおかしくなった
→ チェルノブイリ事故まで原子力産業は、万が一原発で事故が起こったとしても、炉心から外に放出される放射能はとても微量であると断言していた。
→ 原発推進団体の国際組織であるIAEA(国際原子力機関)と人々の健康への危険を監視するはずのWHO(世界保健機関)が、核にかかわる健康被害については一切研究をしないという悪名高い契約を1959年に結んだため、WHOはチェルノブイリ事故の研究をいっさいしていない。
→ 2005年にIAEAが出した報告によるとチェルノブイリ事故が原因で亡くなった犠牲者は56人(トンデモ報告)。
→ しかし、650000人いた事故後の作業員だけでも少なくとも5000人から10000人は若くして死んでしまっている。
→ ベラルーシ、ロシア、ウクライナの汚染地域の成人男性の寿命は世界の最貧国の一つであるスリランカより更に10歳も低い。
10 フランスでもホットスポットがあったのに隠ぺいされた
→ 当時のフランス政府はチェルノブイリの放射能の影響は全くないから安全だと国民に報告をした。現在になってやっとフランスの一部は高濃度汚染地域であるベラルーシやウクライナと同等であったと認めた。80%の電気が原発でまかなわれている国としては驚くべきでない対応だったのかもしれない。
11 数千キロ離れた低濃度汚染地域でも被害は多発している
→ カルディコット医師は小児科医として癌や特殊な病気を専門にしてきたが、以前は小児甲状腺癌を取り扱ったことは一度もなかった。それほど小児甲状腺癌は確率の少ない稀な病気である。
→ ベラルーシでは1986年から2001年までに8358の甲状腺癌のケースが報告されている。その内、716人が児童、342人が青年、そして7300人が大人であった。これは医療的緊急事態である。
→ 2001年にユニセフが要約したチェルノブイリ事故の報告書がある。汚染されたベラルーシ、ロシア、ウクライナの一部ではそこの住民の平均寿命が、最も貧困な国の一つであるスリランカよりも10年も低くなっている。更に、循環器疾患も癌に続く死因の一つになっている。
→ 2004年に初めて、ベラルーシ、ロシア、ウクライナ以外の地域でのチェルノブイリ事故と癌の因果関係を示す研究が発表された。そこにはチェルノブイリ事故が原因とされる癌の発症例は事故発生から1996年までの10年の間にスウェーデン内で849人確認されているということである。チェルノブイリからスウェーデンの距離と、癌発生には子どもでは最低で5年、大人では最低10年かかるという事を考慮すると、少ないとは言えない数値である。
→ フランスでも被曝による甲状腺癌の発病だとされるケースが認められ始めている。
12 原発災害は数十年たっても終わらない
→ 事故から18年たった時点でまだ70%から90%のセシウム137,40%から60%のストロンチウム、そして95%のプルトニウムはその場に残り汚染を続けている。
→ チェルノブイリで行われた石棺はすでに古くなり、いくら修復しても壊れ始めてしまうのは時間の問題であると考えられている。もしもそれが崩れたときには、大量の放射性物質がまた拡散される。事故はまだ終わってはいない。
引用ここまで
原文は、ブログ『中鬼と大鬼のふたりごと』の
【『原子力が答えではない』要点翻訳(2) 鼻血・下痢・発疹は被曝症状、スリーマイルでも隠ぺいされたα線・β線核種、IAEAとWHOの癒着で世界はおかしくなった】
http://onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-54.html
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」の参考記事にさせていただきました。
『原子力が答えではない』要点翻訳(2) 鼻血・下痢・発疹は被曝症状、スリーマイルでも隠ぺいされたα線・β線核種、IAEAとWHOの癒着で世界はおかしくなった
ヘレン・カルディコット医師『原子力が答えではない』(2006年出版)【Helen Caldicott, Nuclear Power Is Not The Answer】の要点和訳の第二弾です。
第1弾の要点は、原子力というものは事故がなくても労働者・住民・地球生命全体に多大な犠牲を強いるものだということでした(第一弾はこちらです)。第2弾は事故(1979年スリーマイルと1986年チェルノブイリ)の際に情報操作がされてきた事実の告発が中心です。特に米国スリーマイル島原発事故については、カルディコット医師自身が現地で医療活動にたずさわった経験から、御用学者の「想定」に基づく「理論」とは比べものにならないほど説得力のある臨床現場での事実が語られています。
カルディコット氏は小児科医です。1977年にハーバード医科大学で教え、1979年のスリーマイル事故をきっかけに脱原発を目指して活動をはじめ、1985年にノーベル平和賞を受賞した核戦争防止国際医師会議(IPPNW)にかかわり、自身もノーベル平和賞に個人ノミネートされています。(Wikipedia)
以下、中鬼が特に驚いた事実をまとめてみました。
<スリーマイル島原発災害について>
1 大嘘だった「原発事故が起こる確率」
2 スリーマイル原発災害でも隠ぺいされたアルファ線・ベータ線核種
3 公表値の4000倍の放射性物質が放出されていた
4 住民に知らされなかった放射能放出:裏で当たり前のようにベントしていた!
5 鼻血、下痢、吐き気、赤い発疹などは大量被曝の症状
6 政治的に隠ぺいされた臨床事実
7 ハーシーズ・チョコレートの犯罪的ビジネス
8 「科学」は金で買収された:こうして御用学者の時代が築かれた
<チェルノブイリ原発災害について>
9 IAEAがWHOを手なずけたことで世界はおかしくなった
10 フランスでもホットスポットがあったのに隠ぺいされた
11 数千キロ離れた低濃度汚染地域でも被害は多発している
12 原発災害は数十年たっても終わらない
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<スリーマイル島原発災害について>
1 大嘘だった「原発事故が起こる確率」
→スリーマイル事故前までは原子力産業はメルトダウンが起こるのは、駐車場で雷にうたれるのと同じくらい低い確率だと断言していた。
※大鬼注:NRCの1975年報告ではメルトダウン事故の確率は「2万年に1回」程度とされていた。日本の御用学者はチェルノブイリ後も何万年に一度とか大隕石が落ちる確率などと言っていた。現実は過去30-40年間に3回もの重大事故が発生した。3・11後のニュースでは、米国テネシー渓谷開発公社が米アラバマ州にあるブラウンズフェリー原発について「100万年に1度の洪水」にも耐えるとしたがその1ヶ月後に通常の竜巻で緊急停止・非常事態に陥った。
2 スリーマイル原発災害でも隠ぺいされたアルファ線・ベータ線核種
→沢山の種類の放射性物質が放出されたと分かっていたのに、政府と原子力産業は数種類の物質しか検査・公表をしなかった。そしてその後も正式な発表として多くの放射性物質の数値が世に出てくることはなかった。
→ガンマ線を測る機械は設置されたものの、それらの機械は高濃度の放射線を測れるものではなかったために多くが「計器故障」という結果になった。
→気体化された放射性物質の測定は事故発生から8日たってからやっと実施された。
→α線とβ線は公式には一度も測られることがなかった。
3 公表値の4000倍の放射性物質が放出されていた
→ そんな中で原子力産業はヨウ素の総排出量は13から17キューリー(48万から63万ベクレル)と、気体化したクリプトン、キセノン、アルゴンの総排出量240万から1300万キューリー(888億から4800億ベクレル)と発表した。しかしこれに対して元NRCの委員長ジョセフ・ヘンドリー(Joseph Hendrie)は、「私たちは目が見えないまま仕事をしているのと同じようなもんだ。州知事の出す情報は曖昧だし、私が持っている情報は無いのにも等しい。何人かの目の見えない人達がヨロヨロと不安定に決断をしようとしているだけだ。」と公表されたデータに対して信頼性が乏しいとの解釈をした。その他の専門家達も上記の数値について「甚だしく控えめな数値だ」と批難している。
→ 「(放射線の健康に対する影響を扱う)保健物理学の父」として知られているカール・モルガン医師(Dr. Karl Morgan)の1982年の調査ではヨウ素の総排出量は64000キューリー(約24億ベクレル)で気体化した物質の総排出量は4500万キューリー(1.665兆ベクレル)としている。
4 住民に知らされなかった放射能放出:裏で当たり前のようにベントしていた!
→ 放射能に関した病気を専門とするカール・ジョンソン医師(Dr. Carl Johnson)は、燃料が溶けたということは、ほぼ確実にプルトニウム、ストロンチウム、アメリシウムも放出されているという事になるとし、NRCにそれらの物質の調査を依頼したが断られた。
→ 事故発生から3日後に約480万リットルの汚染水が、NRCの許可なしにサスケハナ川に流出させられた。この川は漁業な盛んな海岸線につながっていて、ロブスター、蟹、魚など多くの魚介類を汚染したにも関わらず、一般市民にはその危険性について何も通達はなかった。
→ その後も秘密の放射能放出は続く。例えば1980年6月には大量のクリプトン85が事故を起こした原子炉から意図的に外にベントされている。更に 1990年の11月には230万ガロン(870万リットル)ものトリチウムを含んだ汚染水が意図的に蒸気に変えられてベントされている。
※大鬼注:福島第一のベントは「世界で前例のないこと」ではなかった・・黙ってベントするのは殺人ですね。
5 鼻血、下痢、吐き気、赤い発疹などは大量被曝の症状
→ 事故発生後州知事から避難命令がでる以前に8km圏内の5%から6%の住民は自主避難をした。二日後の3月30日に当時のソーンバーグ知事 (Thornburgh) は8km圏内にいる子どもと妊婦に避難命令を出し、約14万人の人達が避難をした。
→ 事故の1週間後にカルディコット医師はペンシルバニアのハリスバーグ(スリーマイル原発から一番近い都市)に行き、避難してきた人達に講演をしたりや質問を受けたりしていた。そこで、避難してきた人達がみせていた体調の状態は、チェルノブイリ事故10年後にプリペットという町の住民が訴えていた症状ととてもよく似ていた。これらの症状は、めまい、嘔吐、下痢、鼻血、口の中に金属の味、脱毛、皮膚の赤い発疹で、これは典型的な急性放射線障害の兆候である。
※大鬼注:こうした症状がみられた方は病院に行きカルテに記録を保存しておくことをお勧めします。
6 隠ぺいされた臨床事実
→ 当時のペンシルバニア州の衛生局長であったゴードン・マクレウド医師(Dr. Gordon McLeod)は、事故前の9ヶ月間に甲状腺機能低下が認められて生まれきた赤ちゃんは9人だったのが、事故の9ヶ月後にはそれが20人になっていたという事実をつきとめた。このデータをもとにスリーマイル事故との因果関係を示す研究が求められたが、それは行われず、このゴードン・マクレウド医師は着任から6ヶ月あまりでクビにされた。
7 ハーシーズ・チョコレートの犯罪的ビジネス
→ ハーシーズは汚染された牛乳であると知っていながらそれを使用してチョコレート製品を作り続けた。
→ ハーシーズは自社が取り扱う牛乳に汚染はないとしたが、おかしなことに事故後には牛乳を通常より多く粉末状にしてヨウ素が消滅するまで保存していた。それでもヨウ素以外の大多数の放射性物質は残留しつづけるのだが。
→ ヨウ素やセシウムが放出されたということは、ストロンチウム90、プルトニウム、アメリシウム等の放射性物質も拡散したということ。それなのにハーシーズは何も検知されなかったとして従来通りその土地の牛乳を使っていた。
8 「科学」は金で買収された:こうして御用学者の時代が築かれた
→ コロンビア大学がスリーマイルの事故に関して二つの研究を発表した。そこには被ばく量とホジキン病や肺がんなどの様々な病気との因果関係が導き出されていたのだが(しかも政府や原子力産業が発表した「甚だしく控えめな数値」を使って!)、サンプルの数が少ないとしてその因果関係は説明できないとしたばかりか、何の科学的根拠もないまま発がん率の増加はストレスによるものとの結論にした。
→ 公式に認められた研究はTMI Public Health Fundという基金から研究費がでていたのだが、その基金は原子力産業から出ていた。そのため、まともな研究をしようとしたグループは全てその選考から外され、それでも研究を続けたとしても学会でバカにされて終わってしまうというとんでもない事態が続いた。
→ このような隠蔽体質、そして情報を軽くしたり後出しするやり方は核実験時代から米国で続けられていた。50年60年代の核実験時代には、そのような実験が健康に害は及ぼさないと断言されていた。1997年にやっと発表された米国立がん研究所(National Cancer Institute)の研究によると、212,000人のアメリカ人が核実験の影響で癌を発病した、もしくはその後発病した。しかしこの研究自体も完全ではなく、NCIの数値はストロンチウム90,セシウム137,そしてプルトニウムなどを考慮せずに計算されていた。
<チェルノブイリ原発災害について>
9 IAEAがWHOを手なずけたことで世界はおかしくなった
→ チェルノブイリ事故まで原子力産業は、万が一原発で事故が起こったとしても、炉心から外に放出される放射能はとても微量であると断言していた。
→ 原発推進団体の国際組織であるIAEA(国際原子力機関)と人々の健康への危険を監視するはずのWHO(世界保健機関)が、核にかかわる健康被害については一切研究をしないという悪名高い契約を1959年に結んだため、WHOはチェルノブイリ事故の研究をいっさいしていない。
→ 2005年にIAEAが出した報告によるとチェルノブイリ事故が原因で亡くなった犠牲者は56人(トンデモ報告)。
→ しかし、650000人いた事故後の作業員だけでも少なくとも5000人から10000人は若くして死んでしまっている。
→ ベラルーシ、ロシア、ウクライナの汚染地域の成人男性の寿命は世界の最貧国の一つであるスリランカより更に10歳も低い。
10 フランスでもホットスポットがあったのに隠ぺいされた
→ 当時のフランス政府はチェルノブイリの放射能の影響は全くないから安全だと国民に報告をした。現在になってやっとフランスの一部は高濃度汚染地域であるベラルーシやウクライナと同等であったと認めた。80%の電気が原発でまかなわれている国としては驚くべきでない対応だったのかもしれない。
11 数千キロ離れた低濃度汚染地域でも被害は多発している
→ カルディコット医師は小児科医として癌や特殊な病気を専門にしてきたが、以前は小児甲状腺癌を取り扱ったことは一度もなかった。それほど小児甲状腺癌は確率の少ない稀な病気である。
→ ベラルーシでは1986年から2001年までに8358の甲状腺癌のケースが報告されている。その内、716人が児童、342人が青年、そして7300人が大人であった。これは医療的緊急事態である。
→ 2001年にユニセフが要約したチェルノブイリ事故の報告書がある。汚染されたベラルーシ、ロシア、ウクライナの一部ではそこの住民の平均寿命が、最も貧困な国の一つであるスリランカよりも10年も低くなっている。更に、循環器疾患も癌に続く死因の一つになっている。
→ 2004年に初めて、ベラルーシ、ロシア、ウクライナ以外の地域でのチェルノブイリ事故と癌の因果関係を示す研究が発表された。そこにはチェルノブイリ事故が原因とされる癌の発症例は事故発生から1996年までの10年の間にスウェーデン内で849人確認されているということである。チェルノブイリからスウェーデンの距離と、癌発生には子どもでは最低で5年、大人では最低10年かかるという事を考慮すると、少ないとは言えない数値である。
→ フランスでも被曝による甲状腺癌の発病だとされるケースが認められ始めている。
12 原発災害は数十年たっても終わらない
→ 事故から18年たった時点でまだ70%から90%のセシウム137,40%から60%のストロンチウム、そして95%のプルトニウムはその場に残り汚染を続けている。
→ チェルノブイリで行われた石棺はすでに古くなり、いくら修復しても壊れ始めてしまうのは時間の問題であると考えられている。もしもそれが崩れたときには、大量の放射性物質がまた拡散される。事故はまだ終わってはいない。
引用ここまで
原文は、ブログ『中鬼と大鬼のふたりごと』の
【『原子力が答えではない』要点翻訳(2) 鼻血・下痢・発疹は被曝症状、スリーマイルでも隠ぺいされたα線・β線核種、IAEAとWHOの癒着で世界はおかしくなった】
http://onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-54.html
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」の参考記事にさせていただきました。
子に体調異変じわり
引用ここから
子に体調異変じわり
原発50キロ 福島・郡山は今
収束の兆しさえ見えない福島第一原発の事故。放射線汚染の範囲は拡大し、
避難区域の外側でも、子どもの健康被害を不安視する声が目立ち始めた。しか
し体調不良と放射線の関係には分からないことが多い。それだけに親たちは疑
心暗鬼で苦しむ。子どもたちを守るために今、できることとは−。
(出田阿生)
画像
福島第一原発と郡山の位置関係
大量の鼻血、下痢、倦怠感…
「放射線と関係不明」
「上の子が一週間くらい毎日大量に鼻血が出続けていたので心配で…。下の子も、時期は違うけれど、やはり一週間くらい鼻血が出て」。思い詰めた表情で母親(三九)が、医師に相談していた。
NPO法人「チェルノブイリへのかけはし」が十二日、福島県郡山市で開いた医師による無料問診会。放射線被害を心配する親子連れ計五十組が参加した。同市は福島第一原発から約五十キロ。
この親子の場合、震災後いったん埼玉県内に避難したが、三月下旬に郡山市に戻った。すると小学校一年の長女(六つ)が、四月上旬から三週間、鼻血が出続けた。このうち一週間は両方の鼻から大量に出血。耳鼻科で診察を受けたが、「花粉症では」と言われた。「花粉症なんて初めて言われたし、普段は滅多に鼻血を出さないんですけど…」と母親は言う。長男(二つ)も四月下旬から五月に鼻血を出し続けた。
診察した小児科医の橋本百合香さんは「放射線被害かどうかは判断できないが、ひとまず小児科で血液検査をして白血球を詳しくみてもらって。記録を残すことが大事」と助言した。
母親によると、小学校ではクラスの一割が避難していなくなった。次々と児童が転校するので、新入生には出席番号がつけられていない。放射性物質が濃縮されやすい牛乳を給食で出すかどうか、学校ごとに対応が異なる。「うちは保護者の選択制。娘が仲間外れにされたくないというので、今は飲ませてます」
福島市から四カ月の長女咲空(さくら)ちゃんを連れてきた平中昭一さん(四〇)は「症状は出ていないが、二十四時間不安で、外出を一切させていない。自衛といってもどうしたらいいのか」と苦悩の表情。生後、他人をほとんど見たことがないという咲空ちゃんは、記者が近づくとおびえた。
問診会場近くの植え込みで、放射線測定器をかざすと、毎時二・三三マイクロシーベルトの値を示した。地面から離すと一マイクロシーベルト台に下がる。郡山市内の十二日の最大値は一・三八マイクロシーベルト。東京都内で計測された同日の最大値が〇・〇六三五マイクロシーベルト。約二十二倍だ。市内の最大値は三月十五日の八・二六マイクロシーベルトで、五月中旬からは一・三マイクロシーベルト前後で推移している。
文部科学省では三・八マイクロシーベルトが計測された学校では屋外活動を制限するとしているが、一方で年間の積算線量の子どもの上限値を一ミリシーベルトから二十ミリシーベルトとしている。これは毎時一・三マイクロシーベルトの場所で一年間暮らせば十分に到達してしまう値でもある。
「医者や学者も言うことが違い、避難の基準が分からない。飯館村は一カ月も放射能を浴びさせて、値が低くなってから避難させた。国も県も信用できない」。長男(六つ)を連れた母親(四十)は、こう憤る。自宅は新築。遭難して経済的にやっていけるのか、何年後に戻れるのか…。費用や子ども初心に与える影響を考えると踏み切れない。
画像
子どもの鼻血を医師に相談する親=12日、福島県郡山市で
毎時線量(マイクロシーベルト)と年間積算線量(ミリシーベルト)
毎時1.3マイクロシーベルトの場合、これに8760時間(24時間×365日)をかけた1万1388時間が年間積算線量。単位を直すと11.388ミリシーベルトとなる。「9をかけてマイクロをミリに直す」と覚えると簡単におおまかな年間積算量が分かる。
引用ここまで

原文は、『yko1998のブログ』の
『【拡散のお願い!マジめな報道 人ごとではありません】【6/16東京新聞こちら特報部②-1】 子に体調異変じわり 大量の鼻血、下痢、倦怠感 ・・・「放射線と関係不明」 原発50キロ 福島・郡山は今』
http://heiheihei.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/616--594d.html
に掲載された、東京新聞の記事「子に体調異変じわり」(2011/06/16)です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここに保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」の参考記事にさせていただきました。
子に体調異変じわり
原発50キロ 福島・郡山は今
収束の兆しさえ見えない福島第一原発の事故。放射線汚染の範囲は拡大し、
避難区域の外側でも、子どもの健康被害を不安視する声が目立ち始めた。しか
し体調不良と放射線の関係には分からないことが多い。それだけに親たちは疑
心暗鬼で苦しむ。子どもたちを守るために今、できることとは−。
(出田阿生)
画像
福島第一原発と郡山の位置関係
大量の鼻血、下痢、倦怠感…
「放射線と関係不明」
「上の子が一週間くらい毎日大量に鼻血が出続けていたので心配で…。下の子も、時期は違うけれど、やはり一週間くらい鼻血が出て」。思い詰めた表情で母親(三九)が、医師に相談していた。
NPO法人「チェルノブイリへのかけはし」が十二日、福島県郡山市で開いた医師による無料問診会。放射線被害を心配する親子連れ計五十組が参加した。同市は福島第一原発から約五十キロ。
この親子の場合、震災後いったん埼玉県内に避難したが、三月下旬に郡山市に戻った。すると小学校一年の長女(六つ)が、四月上旬から三週間、鼻血が出続けた。このうち一週間は両方の鼻から大量に出血。耳鼻科で診察を受けたが、「花粉症では」と言われた。「花粉症なんて初めて言われたし、普段は滅多に鼻血を出さないんですけど…」と母親は言う。長男(二つ)も四月下旬から五月に鼻血を出し続けた。
診察した小児科医の橋本百合香さんは「放射線被害かどうかは判断できないが、ひとまず小児科で血液検査をして白血球を詳しくみてもらって。記録を残すことが大事」と助言した。
母親によると、小学校ではクラスの一割が避難していなくなった。次々と児童が転校するので、新入生には出席番号がつけられていない。放射性物質が濃縮されやすい牛乳を給食で出すかどうか、学校ごとに対応が異なる。「うちは保護者の選択制。娘が仲間外れにされたくないというので、今は飲ませてます」
福島市から四カ月の長女咲空(さくら)ちゃんを連れてきた平中昭一さん(四〇)は「症状は出ていないが、二十四時間不安で、外出を一切させていない。自衛といってもどうしたらいいのか」と苦悩の表情。生後、他人をほとんど見たことがないという咲空ちゃんは、記者が近づくとおびえた。
問診会場近くの植え込みで、放射線測定器をかざすと、毎時二・三三マイクロシーベルトの値を示した。地面から離すと一マイクロシーベルト台に下がる。郡山市内の十二日の最大値は一・三八マイクロシーベルト。東京都内で計測された同日の最大値が〇・〇六三五マイクロシーベルト。約二十二倍だ。市内の最大値は三月十五日の八・二六マイクロシーベルトで、五月中旬からは一・三マイクロシーベルト前後で推移している。
文部科学省では三・八マイクロシーベルトが計測された学校では屋外活動を制限するとしているが、一方で年間の積算線量の子どもの上限値を一ミリシーベルトから二十ミリシーベルトとしている。これは毎時一・三マイクロシーベルトの場所で一年間暮らせば十分に到達してしまう値でもある。
「医者や学者も言うことが違い、避難の基準が分からない。飯館村は一カ月も放射能を浴びさせて、値が低くなってから避難させた。国も県も信用できない」。長男(六つ)を連れた母親(四十)は、こう憤る。自宅は新築。遭難して経済的にやっていけるのか、何年後に戻れるのか…。費用や子ども初心に与える影響を考えると踏み切れない。
画像
子どもの鼻血を医師に相談する親=12日、福島県郡山市で
毎時線量(マイクロシーベルト)と年間積算線量(ミリシーベルト)
毎時1.3マイクロシーベルトの場合、これに8760時間(24時間×365日)をかけた1万1388時間が年間積算線量。単位を直すと11.388ミリシーベルトとなる。「9をかけてマイクロをミリに直す」と覚えると簡単におおまかな年間積算量が分かる。
引用ここまで

原文は、『yko1998のブログ』の
『【拡散のお願い!マジめな報道 人ごとではありません】【6/16東京新聞こちら特報部②-1】 子に体調異変じわり 大量の鼻血、下痢、倦怠感 ・・・「放射線と関係不明」 原発50キロ 福島・郡山は今』
http://heiheihei.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/616--594d.html
に掲載された、東京新聞の記事「子に体調異変じわり」(2011/06/16)です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここに保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」の参考記事にさせていただきました。
チェルノブイリ原発周辺住民の急性放射線障害に関する記録
引用ここから
チェルノブイリ原発周辺住民の急性放射線障害に関する記録
ウラジーミル・ルパンディン
ロシア科学アカデミー・社会学研究所(ロシア)
1992年の3月と6月にわれわれは,1986年4月26日に事故を起こしたチェルノブイリ原発にほど近いベラルーシ共和国ゴメリ州ホイニキ地区の地区中央病院において,事故当時に作成された医療記録の調査を行なった.その結果,事故から数週間の間に記録された82件の放射線被曝例を発見したことは以前に報告した1.そのうち8件は急性放射線症と認められるものであった.われわれの報告は,ベラルーシ,米国,日本において関心を惹き起こした2,3.
しかしながら,それら1986年5月から6月にかけての医療記録を詳しく分析することは,事故直後のホイニキ地区における放射線状況や被曝量に関する情報がなかったり(また歪曲されたり)していたため困難であった.事故の規模を検討する上で最も基本的な情報である,事故直後の放射線状況に関するすべてのデータは,当時の慣例に従って,ソ連水理気象委員会によって秘密にされていた.ホイニキ地区のデータは(すべてのデータはミンスクの共和国記録局へ送られていた),ベラルーシの水理気象委員会によって秘密にされた.
1996年にわれわれは,ホイニキ地区の事故直後の放射線状況に関して信頼できる情報を得ることができた.ホイニキ地区の民間防衛隊の班長が個人的なメモとして保管していたデータである.その民間防衛隊のデータを,ホイニキ地区の衛生管理センターに別途保管されていたデータと照らし合わせてみると,よく一致することが判明した.
個人や地方レベルで得られたデータを否定するため,それらの測定は,よく訓練されていない人が信頼性の不確かな測定器を用いたものである,という指摘がしばしば行なわれる.しかし,今回われわれが得たデータにこのことは当てはまらない.
ホイニキ地区民間防衛隊の班長であるアレクサンドル・カユーダは,1983年まで原子力潜水艦に技師として勤務していた.彼の任務は,原子炉の保守に加えて,原子炉区画の放射線を測ることであった.1983年から彼は,ホイニキ地区民間防衛隊の班長をつとめていた.チェルノブイリ事故以前にも彼は,原発から10〜20㎞地域の放射線量の測定をDP-5(訳注・ガイガーカウンター式放射線測定器)で行なっていた.1985年6月には,ラージン村の近くで240〜250マイクロレントゲン/時という値を測定している(同じ測定器による潜水艦の原子炉区画の測定は40マイクロレントゲン/時程度であった).ラージン村の放射線量上昇の原因は,チェルノブイリ原発からの放射能洩れ以外に考えられない.
民間防衛隊のデータに基づくと,1986年4月26日と27日の段階ではホイニキ地区において,組織的な放射線測定は,軍隊も含め行なわれていない.民間防衛隊本部による最初の放射線測定が行なわれたのは4月28日午前8時であった.そのときの各居住区の放射線量は以下のようであった.
* ホイニキ市:8ミリレントゲン/時
* ストレリチェボ村:14ミリレントゲン/時
* ドゥロニキ村:30ミリレントゲン/時
* オレビチ村:89ミリレントゲン/時
* ボルシチェフカ村:120ミリレントゲン/時
* ラージン村:160ミリレントゲン/時
* ウラーシ村:300ミリレントゲン/時
* チェムコフ村:330ミリレントゲン/時
* マサニ村:500ミリレントゲン/時
4月28日夕方に開かれた地区の評議会で地区民間防衛隊は,住民の多くが数100レムにも及ぶ全身被曝をうける恐れがあるので,当時の住民に対する放射線防護の指針に照らして,地区住民の大部分を速やかに避難させるべきである,と報告した.ゴメリ州民間防衛隊本部長のジューコフスキー(エネルギー工学の技師)と,オブニンスク原発から駆けつけてきていた核物理学者たちが,地区民間防衛隊の意見を支持した.しかし,地区の行政責任者は,地区や州の民間防衛隊の要請を却下したのであった.
5月1日になって,周辺30㎞圏内の子供と妊婦の避難が開始され,5月5日には残りの住民の避難が始まった.結局,地区では5200人の住民が避難した.すべての避難住民は,地区中央病院で検査をうけたが,病院は5月5日から野戦病院として軍組織に組み込まれた.つまり,その日から地区中央病院では,セベロモルスク,セベロドゥビンスク,極東などからやってきた軍医や専門家たちが活動をはじめた.
野戦病院に入院させる基準は以下のとおりであった.
* 甲状腺からのガンマ線量が1000マイクロレントゲン/時以上,
* 上着,靴,皮膚および下着の汚染が100マイクロレントゲン/時以上,
* ガンマ線に基づく体内の汚染(甲状腺,肝臓,腎臓,生殖器)が800〜1000m Ci.
これらの基準に従い,約1万2000人のホイニキ地区住民が野戦病院で入院検査をうけた(事故当時の地区の人口は3万2000人).
ホイニキ地区中央病院の記録保管室から(約1万2000件の)入院カルテが盗まれたのは,1990年の11月のことであった.盗難の後,記録保管室の整理はされず,われわれの調査によって,残されていたカルテが隣接建屋の屋根裏から見つかった.すでに述べたように,それらの中から,1986年5月1日から6月中旬にかけて放射能汚染地域から地区中央病院にやってきた,82件の放射線被曝例が見つかった.この82件という数字は,正体不明の犯人によるカルテ盗難の後に残されていた数であり,全体のごく一部分にすぎないであろう.そのうち22例は,隣のブラーギン地区住民であり,ここでの検討からは除外する.
軍野戦病院
病院から見つかった60例のカルテを検討する.カルテの記述はすべて,きわめて簡単である.このことは,当時の仕事量の膨大さと検閲への配慮をうかがわせる.とりわけ検閲が厳しかったことをうかがわせるのは,退院時に記入されている診断名である.放射線障害に関連する診断をわれわれは1件も見つけることができなかった.
しかしながら,放射能汚染地域から病院へやってきた理由を記した入院指令票の記述は検閲をうかがわせず,われわれの興味を惹くのは,カルテの中に残っていたその指令票の内容である.
入院指令票に記されていた入院理由は,たとえばつぎの通りである.
1. 第2度急性放射線障害
2. 甲状腺からの放射線レベル−10〜16ミリレントゲン/時
3. 全身の衰弱,頭痛,腹痛,吐き気,おう吐,下肢のむくみ
4. 汚染地域の幼児
5. 放射線量上昇地域の滞在と血液検査値の変化(白血球数2500)のための検査入院
6. 吐き気,おう吐,唾液分泌の増大,甲状腺からのガンマ線3000マイクロレントゲン/時以上
7. 放射能汚染,甲状腺3000マイクロレントゲン/時以上
8. 白血球減少:白血球数2300,頭痛
9. 放射能汚染との結論で救護所から転送.甲状腺3ミリレントゲン/時以上,白血球数2900
10. 事故時にチェルノブイリ原発から300mの地点に滞在,白血球数2900
11. 放射能汚染,肝臓5〜10ミリレントゲン/時,甲状腺1.5ミリレントゲン/時
12. 顔,手首の放射線火傷
13. 放射線障害,鼻血
野戦病院へ送られてきた理由の記述とともに,患者の自覚症状についての記述も注目される.頭痛,急な衰弱,吐き気をともなう複合症状がもっとも多く,全体の患者の30%以上に達している.これは,自律神経失調症と呼ばれる症状である.つぎに多い複合症状は,おう吐,腹痛,めまい,食欲不振,心臓部の痛み,口内の乾きや苦みといった症状で,10%程度である.さらに,神経・循環系失調(自律神経失調+心臓部の痛み)といった症状が認められる(13%).
カルテに記されている患者の訴えを一覧にまとめると,
* 頭痛(30例),急な衰弱(29),おう吐(20),めまい(10),心臓部の痛み(8),吐き気(7),食欲不振(7),口の渇き・苦み(7),唾液分泌増加(3),関節痛(3),喉のがらがら(3),眠気(2),下痢(2),睡眠障害(2),右の肋骨下部(肝臓)の痛み(2).1例ずつ記録されているのはつぎの症状:高熱,便秘と排尿困難,行動の遅鈍,鼻血,出血,耳鳴,皮膚痒症,発汗,から咳.
患者たちが送られてきた居住区は以下の通りである.ホイニキ市,プリピャチ市,ボルシチェフカ村,オレビチ村,ウラーシ村・ポゴンノエ村,モロチキ村,カジュシキ村,ドゥロニキ村,フボシチェフカ村,チェムコフ村,ベリーキーボル村,ビソーカヤ村,ブドーブニク村,ノボセルキ村,ロマチ村,マレシェフ村,ノボパクロフカ村,クリビ村,アメリコフシチナ村,エラポフ村,プダコフ村,トゥリゴボチ村,ベレチン村,チェヒ村,ドゥボリシチェ村,ルドノエ村.
カルテの分析の結果,60例をつぎの3グループに分類した.
1.急性放射線症:8例
2.放射線被曝症状:20例
3.明瞭な臨床症状のない甲状腺からの高ガンマ線量例:32例
以下,急性放射線症と放射線被曝症状の個々の症例について紹介する.
急性放射線症
1.クリチェンコ,ニコライ・アレクセイビッチ(仮名)20歳男性,ボルシチェフカ村より.
病院へ入院時期:5月1日午前2時.入院のときの訴え:何度も繰り返される嘔吐,全身衰弱,胃痛(上腹部,左側),頭痛,口渇.
経過:日光浴と魚釣りをするためボルシチェフカ村の親類宅にやってきた.4月26日27日の両日をプリピャチ河畔で過ごした.4月28日に嘔吐が生じ(1昼夜に6度),吐き気,胃痛,高熱(39度).便秘が認められた.4月30日医師の指示で解毒剤を服用.
医師の診察結果:無気力.舌の白濁.3日間便秘.体温:36.6度.ガンマ線の測定結果:衣服がひどく汚染.肝臓からのガンマ線量5〜10ミリレントゲン/時,甲状腺からのガンマ線量1.5ミリレントゲン/時.
5月1日午前5時30分の診察結果:全身衰弱,吐き気,嘔吐(病院へ入院時から1度),尿閉と便秘.5月1日日中の患者の容体:会話困難.頭痛,めまい,何度も繰り返される嘔吐に対する訴え.
血液検査結果:白血球数3600,血小板数26万.尿検査結果:蛋白量4.56g/㍑.5月3日,ゴメリ州立病院に転院.
患者に関する追加情報:4月29日,民間防衛隊医療班長のV・I・コビルコが患者を村で診察.会話困難,頭痛,衰弱,何度も繰り返される嘔吐に対する訴え.村にきて,4月26日と27日プリピャチ河畔で魚釣りをしたと述べる.5月1日,地区中央病院で再びコビルコの診察をうける.重症の状態が続き,会話困難.診断:第2度または第3度急性放射線症.
患者がやってきたボルシチェフカ村は,チェルノブイリ原発の北方17.5㎞,プリピャチ川右河畔にある.1986年1月1日の住民数は311人.
ボルシチェフカ村の放射線量の測定:ホイニキ地区民間防衛隊のデータによると,4月28日のボルシチェフカ村の放射線レベルは120ミリレントゲン/時であった.5月20日,ボルシチェフカ村高度300mの大気中の測定は28ミリレントゲン/時,地上では50ミリレントゲン/時.ホイニキ地区衛生管理センターのデータによると,4月29日のボルシチェフカ村のガンマ線量率は60〜100ミリレントゲン/時,ストロンチウム90の汚染密度は13.4Ci/km2.
筆者の見解:患者の臨床経過は,第3度急性放射線症に相当している.彼の被曝量はおそらく300レムを越えているだろう.患者が被曝したのは,主に4月26日と27日の2日間であるから,このことは,この2日間,ボルシチェフカ村周辺の放射線レベルが非常に高かったことをもの語っている.4月28日の放射線レベルが120ミリレントゲン/時であったことを考えると,非常に高いレベルの放射線をもたらしたのは,かなり短い半減期の放射能であったと結論できる.
重篤な被曝症状に至ったのは,放射線レベルが高かったことのみならず,患者が日光浴をしたこととも関連している(暑い天気が続いた).1986年4月26月と27日の両日,プリピャチ川の河畔で休暇を過ごしていたのが患者一人だけでなかったことは容易に想定できる.この両日,野外で上着を脱いで過ごし大きな被曝をうけた人々が,ホイニキ地区から遠く離れた地域に至るまで大勢いたことであろう.
2.カルテ№2505/467.(氏名略)ボルシチェフカ村住民,男性47歳,コルホーズ「5月1日」の搾乳係.5月2日2時45分,地区中央病院入院.ポゴンノエ村診療所長からの転送.入院理由:第2度急性放射線症.入院時に,吐き気,嘔吐,脱力感,胃痛に対する訴え.5月1日,上腹部の痛み,吐き気と嘔吐が生じて発病と述べる.5月2日16時30分の診察:嘔吐は繰り返されず,容体好転.胃の痛み.血液検査:白血球4700.
5月4日,患者は無断で退院.
3.カルテ№7539/464.(氏名略)男性82歳,ボルシチェフカ村住民.5月3日,地区中央病院入院.全身衰弱,頭痛,胃の痛み,嘔吐に対する訴え.夜までに,下肢のむくみが現れた.5月4日,病院から退去.
4.カルテ№2520/476.(氏名略)女性48歳.5月3日,モロチキ村から入院.4月28日,発病の徴候.吐き気,嘔吐,激しい全身衰弱,1日4回の水っぽい便.4月30日,医師に相談.
5月3日の診察:患者は,上腹部の痛み,吐き気,嘔吐,流涎を訴える.甲状腺からの放射線3000マイクロレントゲン/時(5月7日).白血球,3500(5月9日).5月13日退院.
筆者の見解:第1度から第2度の急性放射線症を,臨床経過,放射能汚染地域への滞在,甲状腺からの放射線量ならびに白血球減少症が示している.患者の容体中,腸の障害が注目される.4月28日に急性放射線症の最初の徴候が現れたことは,彼女が4月26日と27日にかけて100レム以上の被曝をうけたことをもの語っている.患者はチェルノブイリ原発から20㎞,住民数124人のモロチキ村に住んでいた.民間防衛隊のデータによれば,4月28日のモロチキ村の放射線量は280ミリレントゲン/時(ボルシチェフカ村の2倍).衛生管理センターのデータでは,4月29日に130〜190ミリレントゲン/時,4月30日は60〜70ミリレントゲン/時でストロンチウムの汚染は25Ci/km2.
5.(氏名略)男性35歳,ドゥロニキ村住民,ソフホーズ「オレビッチィ」で働く.5月3日,地区中央病院入院.訴え:脱力感,めまい,吐き気,嘔吐.4月28日発病.脱力感,吐き気,嘔吐が生じた.これらの症状が1週間(4月28日から5月2日まで)消えなかった.5月3日容体が悪化した.5月3日の診察:患者は行動が若干鈍化,60ラドの被曝をうけたと述べる.5月6日退院.
ドゥロニキ村は原発から35㎞,住民数232人.民間防衛隊のデータによれば,4月28日の放射線量は30ミリレントゲン/時.衛生管理センターのデータによれば,同じ日に26〜28ミリレントゲン/時,ストロンチウム90の汚染は2.7Ci/km2.
6.カルテ № 8977/438.(氏名略)男性55歳,アメリコフシチナ村住民.5月10日入院.5月4日発病.全身衰弱,胃の痛み,下痢,吐き気,嘔吐が生じた.患者の訴え:水っぽい便,胃の痛み,脱力感.血液検査:白血球3200.
7.カルテ№ 8302/602.(氏名略)女性57歳,クリビ村(原発から70㎞)住民.放射能汚染地域に滞在していたため6月11日に入院.病状が1ヶ月前から継続.訴え:右肋骨下部の痛み,吐き気,嘔吐,めまい,全身衰弱,胃,背中,頸,足の痛み.5月20日に1回嘔吐.6月10日の血液検査:白血球2500,血小板16.5万,赤血球363万,血圧210/115.
8.カルテ№7588.(氏名略)2歳7ヶ月の幼女,ポゴンノエ村.5月4日入院.入院理由:潰瘍性口内炎,高汚染地域からの子供.訴え:食事拒否,流涎.また,唇,口内,頬の腫れ・炎症.体温37.8度.5月6日,口内炎が消えない,州立こども病院に転院.
ポゴンノエ村(住民数1503人)は,チェルノブイリ原発から27㎞.衛生管理センターのデータによれば,4月28日,放射線量は30〜35ミリレントゲン/時,ストロンチウム汚染は10Ci/km2.
患者の症状に嘔吐は認められなかったが,われわれはこのケースを急性放射線症に加えた.潰瘍性口内炎はベータ線被曝による障害と解釈されるし,食物拒否,高熱,流涎は容体の深刻さを物語っている.
以上の医療記録から以下のように言える.患者たちは1986年4月26日から汚染地域に滞在し,かなりの放射線被曝をうけた.すべての患者に,急性放射線症を特徴づける臨床状態が共通して認められる.われわれのリストの中で,患者クリチェンコの症例はきわだっており,彼のケースは,チェルノブイリ原発周辺30㎞圏内での急性放射線症の典型例と言えるであろう.
放射線被曝症状
放射線被曝症状はつぎに述べる臨床症状に分類される.
1.血液像症状:血球減少症,白血球減少症
2.自律神経失調症
3.神経・循環系失調症
4.咽頭部障害
5.粘液・皮膚のベータ線障害
6. 甲状腺の高レベル被曝
白血球減少症:
9.カルテ7784.(氏名略)女性65歳,アメリコフシチナ村住民.5月12日入院.入院理由:放射能汚染.5月15日の放射線測定:衣服500マイクロレントゲン/時.甲状腺1200マイクロレントゲン/時.血液検査:白血球数2200.5月20日退院.
10.カルテ8011/554.(氏名略)男性21歳,ホイニキ市住民.5月23日,「放射能高汚染地域の滞在,血液検査の変化のため検査入院」.血液検査:白血球2500.甲状腺の放射線量130マイクロレントゲン/時.第1度の急性放射線症に対応する治療:グルコン酸カルシウム,レモン酸,総合ビタミン剤,ミネラル・ウォーター,イゾフェニン,胆汁排出剤.6月2日退院.
11.カルテ№ 8318/604.(氏名略)男性41歳,運転手,ホイニキ市住民.5月13日入院.肝臓の放射線量80マイクロレントゲン/時.甲状腺35マイクロレントゲン/時.血液検査:白血球2300,血小板14.4万.訴え:頭痛.
12.カルテ №7641/318.(氏名略)女性33歳,ポゴンノエ村住民.放射能汚染地域から入院.訴え:中程度の頭痛,口渇,苦味.5月6日の血液検査:白血球2200.5月7日の甲状腺1400マイクロレントゲン/時.
自律神経失調症:
13.カルテ№7868/533.(氏名略)男性64歳,ウラーシ村住民.コルホーズ「新生活」労働者(5月5日ストレリチェボ村へ避難).5月20日地区中央病院入院.入院のときに全身衰弱,眠気,病気ぎみ,腰の痛みに対する訴え.病院へ送られてきた理由は,放射能汚染.居住の村は最高汚染地域.村での甲状腺放射線量は1.9〜2.0ミリレントゲン/時.入院のときの甲状腺放射線量は3ミリレントゲン/時以上.5月27日の血液検査で白血球2900.6月5日退院.
4月26日より5月5日まで患者は,4月28日に300ミリレントゲン/時が記録されているウラーシ村に居住,5月5日より15日までストレリチェボ村に滞在.
14.カルテ№7805/496/539.(氏名略)女性63歳,ノボセルキ村.5月13日入院.入院理由:放射能汚染.放射線量:肝臓1000マイクロレントゲン/時,甲状腺3000マイクロレントゲン/時.患者は3日の間(5月10日より12日まで)原発から65㎞の野外に滞在.頭痛,吐き気,食欲不振,全身衰弱,病気ぎみ,眠気に対する訴え.5月19日の血液検査:白血球3200.5月27日退院.
15.カルテ№7795/491.(氏名略)女性59歳,ノボセルキ村住民.5月13日入院.入院理由:自律神経失調症.5月14日の衣服の放射線,700マイクロレントゲン/時.甲状腺2000マイクロレントゲン/時.頭痛,吐き気,のどのイガラに対する訴え.患者は原発から60㎞の野外で長時間を過ごした.5月21日退院.
16.カルテ№7818/495.(氏名略)女性49歳,ノボセルキ村.5月13日入院.病院へ送られてきた理由は放射能汚染.5月14日の衣服の放射線量900マイクロレントゲン/時,甲状腺3000マイクロレントゲン/時.5月10日に発病の徴候.原発から65㎞の所に滞在.衰弱,吐き気,食欲不振,頭痛に対する訴え.5月21日退院.
17.カルテ№7818/502.(氏名略)女性57歳,ノボセルキ村.5月15日入院.衣服のガンマ線量700マイクロレントゲン/時,甲状腺2600マイクロレントゲン/時.5月19日の血液検査,白血球2900.原発から65㎞の野外に滞在.自宅の家畜の牛のミルクを飲用.頭痛,衰弱,病気ぎみ,心臓部の痛みに対する訴え.
ベータ線による皮膚炎,やけど:
18.カルテ№7587/1060.(氏名略)男性35歳,ベリーキーボル村住民.5月4日入院.顔,手首の放射線やけどのため病院へ送られてきた.身体表面のガンマ線量300マイクロレントゲン/時,甲状腺700マイクロレントゲン/時.不快感,頭痛の訴え.
19.カルテ№7655/461.(氏名略)女性43歳,搾乳婦,ビソーカヤ村住民.5月6日23時入院.放射能による外傷(?),鼻血のため病院へ送られてくる.患者は5月1日より5日まで,チェムコフ村〜ウラーシ村付近で牛の搾乳にたずさわった.5月5日,頭痛,吐き気,鼻血が出現.客観的症状:顔の皮膚,頸,手首の黒っぽい日焼け,頬が充血.血液検査:白血球3000.5月8日無断退院.
20.カルテ№7794/540.(氏名略)女性64歳,ノボセルキ村住民,5月13日入院.入院理由:放射能汚染.衣服のガンマ線1700マイクロレントゲン/時,甲状腺3000マイクロレントゲン/時以上.頭痛,吐き気,上腹部の痛みの訴え.チェルノブイリ原発から60㎞の所に居住.自宅の菜園で働いき,身体の外部に露出した部分が日焼け.5月26日の血液検査:白血球2800.5月29日退院.
神経・循環系失調症:
21.カルテ№8013.(氏名略)女性21歳,ホイニキ市住民.ブラーギン地区の衛生管理センターに勤務.5月23日入院.入院の1週間前から病気の兆候.患者は再三,高放射能汚染地域で働いた.頭頂部の激しい痛み,吐き気,衰弱,関節痛,心臓部の痛み,不眠,食欲欠如に対する訴え.6月2日退院.
22.カルテ№8060/550.(氏名略)女性49歳,ホイニキ市住民.5月23日入院.病気の徴候は5月3日に初めて発生.衰弱,吐き気が生じて,微熱.5月20日体温が39度に上がり,容体が悪化.頭痛,激しい衰弱,不快感,食欲欠如,吐き気,腰痛,頭頂部の痛み,口渇の訴え.
23.カルテ№7806/498.(氏名略)男性67歳,マレシェフ村(ホイニキ市のはずれ).5月14日入院.入院理由:放射能汚染.甲状腺のガンマ線量1700マイクロレントゲン/時.血液検査:白血球2400,血小板10万.衰弱,頭痛,心臓部のうずくような痛みの訴え.5月21日退院.
咽頭部障害:
24.カルテ№7783/512.(氏名略)男性50歳,ボルシチェフカ村.5月12日放射能汚染の理由で入院.甲状腺のガンマ線量3000マイクロレントゲン/時以上.頭痛,から咳,気管入口のイガラの訴え.検査結果:口腔・咽頭粘膜の明白な充血.5月23日退院.
25.カルテ№7785/490.(氏名略),女性47歳,ネビトフ村.5月13日入院.理由:放射能汚染.原発から65kmの所に滞在.ソフホーズで働く.身体の露出した部分が日焼け.頭痛,衰弱,皮膜のむずがゆさ,口の焼けるようなひりひりした痛み,から咳に対する訴え.甲状腺放射線量300マイクロレントゲン/時. 血液検査:白血球2800,血小板14万.
26.カルテ№ 3637/363.(氏名略)女性36歳,ポゴンノエ村.5月5日入院.血液検査:白血球3400.甲状腺放射線量1400マイクロレントゲン/時.痛み,のどのイガラ,刺激感.5月12日退院.
甲状腺の高レベル被曝:
27.カルテ№8239/588.(氏名略)男性57歳,ロマチ村,巡回警備員.5月14日入院.甲状腺からのガンマ線量16ミリレントゲン/時.全身衰弱,口渇,頭痛の訴え.6月14日退院.
28.カルテ№8011/554.(氏名略)男性21歳,ホイニキ市住民.5月23日,医療衛生隊救護所から「放射線レベル測定不能(?)」との理由で転送されてくる.甲状腺のガンマ線量13ミリレントゲン/時.血液検査:白血球2500.
まとめ
チェルノブイリ原発周辺の住民に急性放射線症がなかったという,IAEA(国際原子力機関),赤十字,WHO(世界保健機関)その他の見解を論理的に否定するためには,1件の症例(患者クリチェンコ)をあげれば十分である.しかし,患者クリチェンコのケースが単独で発生していたわけではない.もしボルシチェフカ村住民の1%に急性放射線症があったとすれば,マサーニ村,ウラーシ村などでは,その割合はもっと大きかったはずである.ホイニキ地区の30㎞圏からは5200人が避難したが,30㎞圏全体では10万人以上が避難した.われわれは1000件以上の急性放射線症があったと考えねばならない.
これまでに明らかにされたデータは,1986年4月26日から27日にかけて放射線レベルが非常に高かったことを物語っている.この2日の間に,(野外での労働とか日光浴といった)特定の条件にあった人々は,100から300レムにも及ぶ被曝をうけることになった.休日(4月26日と27日)を過ごすために来ていた人々を加えると,その2日間に30㎞圏内で被曝した人々の数は,そこで暮らしていた住民の数よりかなり多かったことも明らかである.
さらに,4月26日,27日の非常に強烈な放射線状況は,30㎞圏から遠く離れた地域まで,とりわけ,日光浴をしたり自宅の菜園で働いたりしながら野外に長くいた人々がかなりの被曝をうけた可能性を示している.
1986年の4月から6月にかけて記録されたベラルーシ住民の病気とその特殊性を分析するにあたって,われわれはこうした要因を考慮する必要がある.
文献
1. V. Lupandin, "Invisible Victims", NABAT 36, October 1992. (和訳:「隠れた犠牲者たち」,技術と人間,1993年4月号)
2. 広河隆一,「チェルノブイリ:失われた医療記録」,現代,1993年9月号.
3. Los Angeles Times, April 14, 1992.
引用ここまで
原文は、こちらです。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/saigai/Lupan-j.html
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」の参考記事にさせていただきました。
チェルノブイリ原発周辺住民の急性放射線障害に関する記録
ウラジーミル・ルパンディン
ロシア科学アカデミー・社会学研究所(ロシア)
1992年の3月と6月にわれわれは,1986年4月26日に事故を起こしたチェルノブイリ原発にほど近いベラルーシ共和国ゴメリ州ホイニキ地区の地区中央病院において,事故当時に作成された医療記録の調査を行なった.その結果,事故から数週間の間に記録された82件の放射線被曝例を発見したことは以前に報告した1.そのうち8件は急性放射線症と認められるものであった.われわれの報告は,ベラルーシ,米国,日本において関心を惹き起こした2,3.
しかしながら,それら1986年5月から6月にかけての医療記録を詳しく分析することは,事故直後のホイニキ地区における放射線状況や被曝量に関する情報がなかったり(また歪曲されたり)していたため困難であった.事故の規模を検討する上で最も基本的な情報である,事故直後の放射線状況に関するすべてのデータは,当時の慣例に従って,ソ連水理気象委員会によって秘密にされていた.ホイニキ地区のデータは(すべてのデータはミンスクの共和国記録局へ送られていた),ベラルーシの水理気象委員会によって秘密にされた.
1996年にわれわれは,ホイニキ地区の事故直後の放射線状況に関して信頼できる情報を得ることができた.ホイニキ地区の民間防衛隊の班長が個人的なメモとして保管していたデータである.その民間防衛隊のデータを,ホイニキ地区の衛生管理センターに別途保管されていたデータと照らし合わせてみると,よく一致することが判明した.
個人や地方レベルで得られたデータを否定するため,それらの測定は,よく訓練されていない人が信頼性の不確かな測定器を用いたものである,という指摘がしばしば行なわれる.しかし,今回われわれが得たデータにこのことは当てはまらない.
ホイニキ地区民間防衛隊の班長であるアレクサンドル・カユーダは,1983年まで原子力潜水艦に技師として勤務していた.彼の任務は,原子炉の保守に加えて,原子炉区画の放射線を測ることであった.1983年から彼は,ホイニキ地区民間防衛隊の班長をつとめていた.チェルノブイリ事故以前にも彼は,原発から10〜20㎞地域の放射線量の測定をDP-5(訳注・ガイガーカウンター式放射線測定器)で行なっていた.1985年6月には,ラージン村の近くで240〜250マイクロレントゲン/時という値を測定している(同じ測定器による潜水艦の原子炉区画の測定は40マイクロレントゲン/時程度であった).ラージン村の放射線量上昇の原因は,チェルノブイリ原発からの放射能洩れ以外に考えられない.
民間防衛隊のデータに基づくと,1986年4月26日と27日の段階ではホイニキ地区において,組織的な放射線測定は,軍隊も含め行なわれていない.民間防衛隊本部による最初の放射線測定が行なわれたのは4月28日午前8時であった.そのときの各居住区の放射線量は以下のようであった.
* ホイニキ市:8ミリレントゲン/時
* ストレリチェボ村:14ミリレントゲン/時
* ドゥロニキ村:30ミリレントゲン/時
* オレビチ村:89ミリレントゲン/時
* ボルシチェフカ村:120ミリレントゲン/時
* ラージン村:160ミリレントゲン/時
* ウラーシ村:300ミリレントゲン/時
* チェムコフ村:330ミリレントゲン/時
* マサニ村:500ミリレントゲン/時
4月28日夕方に開かれた地区の評議会で地区民間防衛隊は,住民の多くが数100レムにも及ぶ全身被曝をうける恐れがあるので,当時の住民に対する放射線防護の指針に照らして,地区住民の大部分を速やかに避難させるべきである,と報告した.ゴメリ州民間防衛隊本部長のジューコフスキー(エネルギー工学の技師)と,オブニンスク原発から駆けつけてきていた核物理学者たちが,地区民間防衛隊の意見を支持した.しかし,地区の行政責任者は,地区や州の民間防衛隊の要請を却下したのであった.
5月1日になって,周辺30㎞圏内の子供と妊婦の避難が開始され,5月5日には残りの住民の避難が始まった.結局,地区では5200人の住民が避難した.すべての避難住民は,地区中央病院で検査をうけたが,病院は5月5日から野戦病院として軍組織に組み込まれた.つまり,その日から地区中央病院では,セベロモルスク,セベロドゥビンスク,極東などからやってきた軍医や専門家たちが活動をはじめた.
野戦病院に入院させる基準は以下のとおりであった.
* 甲状腺からのガンマ線量が1000マイクロレントゲン/時以上,
* 上着,靴,皮膚および下着の汚染が100マイクロレントゲン/時以上,
* ガンマ線に基づく体内の汚染(甲状腺,肝臓,腎臓,生殖器)が800〜1000m Ci.
これらの基準に従い,約1万2000人のホイニキ地区住民が野戦病院で入院検査をうけた(事故当時の地区の人口は3万2000人).
ホイニキ地区中央病院の記録保管室から(約1万2000件の)入院カルテが盗まれたのは,1990年の11月のことであった.盗難の後,記録保管室の整理はされず,われわれの調査によって,残されていたカルテが隣接建屋の屋根裏から見つかった.すでに述べたように,それらの中から,1986年5月1日から6月中旬にかけて放射能汚染地域から地区中央病院にやってきた,82件の放射線被曝例が見つかった.この82件という数字は,正体不明の犯人によるカルテ盗難の後に残されていた数であり,全体のごく一部分にすぎないであろう.そのうち22例は,隣のブラーギン地区住民であり,ここでの検討からは除外する.
軍野戦病院
病院から見つかった60例のカルテを検討する.カルテの記述はすべて,きわめて簡単である.このことは,当時の仕事量の膨大さと検閲への配慮をうかがわせる.とりわけ検閲が厳しかったことをうかがわせるのは,退院時に記入されている診断名である.放射線障害に関連する診断をわれわれは1件も見つけることができなかった.
しかしながら,放射能汚染地域から病院へやってきた理由を記した入院指令票の記述は検閲をうかがわせず,われわれの興味を惹くのは,カルテの中に残っていたその指令票の内容である.
入院指令票に記されていた入院理由は,たとえばつぎの通りである.
1. 第2度急性放射線障害
2. 甲状腺からの放射線レベル−10〜16ミリレントゲン/時
3. 全身の衰弱,頭痛,腹痛,吐き気,おう吐,下肢のむくみ
4. 汚染地域の幼児
5. 放射線量上昇地域の滞在と血液検査値の変化(白血球数2500)のための検査入院
6. 吐き気,おう吐,唾液分泌の増大,甲状腺からのガンマ線3000マイクロレントゲン/時以上
7. 放射能汚染,甲状腺3000マイクロレントゲン/時以上
8. 白血球減少:白血球数2300,頭痛
9. 放射能汚染との結論で救護所から転送.甲状腺3ミリレントゲン/時以上,白血球数2900
10. 事故時にチェルノブイリ原発から300mの地点に滞在,白血球数2900
11. 放射能汚染,肝臓5〜10ミリレントゲン/時,甲状腺1.5ミリレントゲン/時
12. 顔,手首の放射線火傷
13. 放射線障害,鼻血
野戦病院へ送られてきた理由の記述とともに,患者の自覚症状についての記述も注目される.頭痛,急な衰弱,吐き気をともなう複合症状がもっとも多く,全体の患者の30%以上に達している.これは,自律神経失調症と呼ばれる症状である.つぎに多い複合症状は,おう吐,腹痛,めまい,食欲不振,心臓部の痛み,口内の乾きや苦みといった症状で,10%程度である.さらに,神経・循環系失調(自律神経失調+心臓部の痛み)といった症状が認められる(13%).
カルテに記されている患者の訴えを一覧にまとめると,
* 頭痛(30例),急な衰弱(29),おう吐(20),めまい(10),心臓部の痛み(8),吐き気(7),食欲不振(7),口の渇き・苦み(7),唾液分泌増加(3),関節痛(3),喉のがらがら(3),眠気(2),下痢(2),睡眠障害(2),右の肋骨下部(肝臓)の痛み(2).1例ずつ記録されているのはつぎの症状:高熱,便秘と排尿困難,行動の遅鈍,鼻血,出血,耳鳴,皮膚痒症,発汗,から咳.
患者たちが送られてきた居住区は以下の通りである.ホイニキ市,プリピャチ市,ボルシチェフカ村,オレビチ村,ウラーシ村・ポゴンノエ村,モロチキ村,カジュシキ村,ドゥロニキ村,フボシチェフカ村,チェムコフ村,ベリーキーボル村,ビソーカヤ村,ブドーブニク村,ノボセルキ村,ロマチ村,マレシェフ村,ノボパクロフカ村,クリビ村,アメリコフシチナ村,エラポフ村,プダコフ村,トゥリゴボチ村,ベレチン村,チェヒ村,ドゥボリシチェ村,ルドノエ村.
カルテの分析の結果,60例をつぎの3グループに分類した.
1.急性放射線症:8例
2.放射線被曝症状:20例
3.明瞭な臨床症状のない甲状腺からの高ガンマ線量例:32例
以下,急性放射線症と放射線被曝症状の個々の症例について紹介する.
急性放射線症
1.クリチェンコ,ニコライ・アレクセイビッチ(仮名)20歳男性,ボルシチェフカ村より.
病院へ入院時期:5月1日午前2時.入院のときの訴え:何度も繰り返される嘔吐,全身衰弱,胃痛(上腹部,左側),頭痛,口渇.
経過:日光浴と魚釣りをするためボルシチェフカ村の親類宅にやってきた.4月26日27日の両日をプリピャチ河畔で過ごした.4月28日に嘔吐が生じ(1昼夜に6度),吐き気,胃痛,高熱(39度).便秘が認められた.4月30日医師の指示で解毒剤を服用.
医師の診察結果:無気力.舌の白濁.3日間便秘.体温:36.6度.ガンマ線の測定結果:衣服がひどく汚染.肝臓からのガンマ線量5〜10ミリレントゲン/時,甲状腺からのガンマ線量1.5ミリレントゲン/時.
5月1日午前5時30分の診察結果:全身衰弱,吐き気,嘔吐(病院へ入院時から1度),尿閉と便秘.5月1日日中の患者の容体:会話困難.頭痛,めまい,何度も繰り返される嘔吐に対する訴え.
血液検査結果:白血球数3600,血小板数26万.尿検査結果:蛋白量4.56g/㍑.5月3日,ゴメリ州立病院に転院.
患者に関する追加情報:4月29日,民間防衛隊医療班長のV・I・コビルコが患者を村で診察.会話困難,頭痛,衰弱,何度も繰り返される嘔吐に対する訴え.村にきて,4月26日と27日プリピャチ河畔で魚釣りをしたと述べる.5月1日,地区中央病院で再びコビルコの診察をうける.重症の状態が続き,会話困難.診断:第2度または第3度急性放射線症.
患者がやってきたボルシチェフカ村は,チェルノブイリ原発の北方17.5㎞,プリピャチ川右河畔にある.1986年1月1日の住民数は311人.
ボルシチェフカ村の放射線量の測定:ホイニキ地区民間防衛隊のデータによると,4月28日のボルシチェフカ村の放射線レベルは120ミリレントゲン/時であった.5月20日,ボルシチェフカ村高度300mの大気中の測定は28ミリレントゲン/時,地上では50ミリレントゲン/時.ホイニキ地区衛生管理センターのデータによると,4月29日のボルシチェフカ村のガンマ線量率は60〜100ミリレントゲン/時,ストロンチウム90の汚染密度は13.4Ci/km2.
筆者の見解:患者の臨床経過は,第3度急性放射線症に相当している.彼の被曝量はおそらく300レムを越えているだろう.患者が被曝したのは,主に4月26日と27日の2日間であるから,このことは,この2日間,ボルシチェフカ村周辺の放射線レベルが非常に高かったことをもの語っている.4月28日の放射線レベルが120ミリレントゲン/時であったことを考えると,非常に高いレベルの放射線をもたらしたのは,かなり短い半減期の放射能であったと結論できる.
重篤な被曝症状に至ったのは,放射線レベルが高かったことのみならず,患者が日光浴をしたこととも関連している(暑い天気が続いた).1986年4月26月と27日の両日,プリピャチ川の河畔で休暇を過ごしていたのが患者一人だけでなかったことは容易に想定できる.この両日,野外で上着を脱いで過ごし大きな被曝をうけた人々が,ホイニキ地区から遠く離れた地域に至るまで大勢いたことであろう.
2.カルテ№2505/467.(氏名略)ボルシチェフカ村住民,男性47歳,コルホーズ「5月1日」の搾乳係.5月2日2時45分,地区中央病院入院.ポゴンノエ村診療所長からの転送.入院理由:第2度急性放射線症.入院時に,吐き気,嘔吐,脱力感,胃痛に対する訴え.5月1日,上腹部の痛み,吐き気と嘔吐が生じて発病と述べる.5月2日16時30分の診察:嘔吐は繰り返されず,容体好転.胃の痛み.血液検査:白血球4700.
5月4日,患者は無断で退院.
3.カルテ№7539/464.(氏名略)男性82歳,ボルシチェフカ村住民.5月3日,地区中央病院入院.全身衰弱,頭痛,胃の痛み,嘔吐に対する訴え.夜までに,下肢のむくみが現れた.5月4日,病院から退去.
4.カルテ№2520/476.(氏名略)女性48歳.5月3日,モロチキ村から入院.4月28日,発病の徴候.吐き気,嘔吐,激しい全身衰弱,1日4回の水っぽい便.4月30日,医師に相談.
5月3日の診察:患者は,上腹部の痛み,吐き気,嘔吐,流涎を訴える.甲状腺からの放射線3000マイクロレントゲン/時(5月7日).白血球,3500(5月9日).5月13日退院.
筆者の見解:第1度から第2度の急性放射線症を,臨床経過,放射能汚染地域への滞在,甲状腺からの放射線量ならびに白血球減少症が示している.患者の容体中,腸の障害が注目される.4月28日に急性放射線症の最初の徴候が現れたことは,彼女が4月26日と27日にかけて100レム以上の被曝をうけたことをもの語っている.患者はチェルノブイリ原発から20㎞,住民数124人のモロチキ村に住んでいた.民間防衛隊のデータによれば,4月28日のモロチキ村の放射線量は280ミリレントゲン/時(ボルシチェフカ村の2倍).衛生管理センターのデータでは,4月29日に130〜190ミリレントゲン/時,4月30日は60〜70ミリレントゲン/時でストロンチウムの汚染は25Ci/km2.
5.(氏名略)男性35歳,ドゥロニキ村住民,ソフホーズ「オレビッチィ」で働く.5月3日,地区中央病院入院.訴え:脱力感,めまい,吐き気,嘔吐.4月28日発病.脱力感,吐き気,嘔吐が生じた.これらの症状が1週間(4月28日から5月2日まで)消えなかった.5月3日容体が悪化した.5月3日の診察:患者は行動が若干鈍化,60ラドの被曝をうけたと述べる.5月6日退院.
ドゥロニキ村は原発から35㎞,住民数232人.民間防衛隊のデータによれば,4月28日の放射線量は30ミリレントゲン/時.衛生管理センターのデータによれば,同じ日に26〜28ミリレントゲン/時,ストロンチウム90の汚染は2.7Ci/km2.
6.カルテ № 8977/438.(氏名略)男性55歳,アメリコフシチナ村住民.5月10日入院.5月4日発病.全身衰弱,胃の痛み,下痢,吐き気,嘔吐が生じた.患者の訴え:水っぽい便,胃の痛み,脱力感.血液検査:白血球3200.
7.カルテ№ 8302/602.(氏名略)女性57歳,クリビ村(原発から70㎞)住民.放射能汚染地域に滞在していたため6月11日に入院.病状が1ヶ月前から継続.訴え:右肋骨下部の痛み,吐き気,嘔吐,めまい,全身衰弱,胃,背中,頸,足の痛み.5月20日に1回嘔吐.6月10日の血液検査:白血球2500,血小板16.5万,赤血球363万,血圧210/115.
8.カルテ№7588.(氏名略)2歳7ヶ月の幼女,ポゴンノエ村.5月4日入院.入院理由:潰瘍性口内炎,高汚染地域からの子供.訴え:食事拒否,流涎.また,唇,口内,頬の腫れ・炎症.体温37.8度.5月6日,口内炎が消えない,州立こども病院に転院.
ポゴンノエ村(住民数1503人)は,チェルノブイリ原発から27㎞.衛生管理センターのデータによれば,4月28日,放射線量は30〜35ミリレントゲン/時,ストロンチウム汚染は10Ci/km2.
患者の症状に嘔吐は認められなかったが,われわれはこのケースを急性放射線症に加えた.潰瘍性口内炎はベータ線被曝による障害と解釈されるし,食物拒否,高熱,流涎は容体の深刻さを物語っている.
以上の医療記録から以下のように言える.患者たちは1986年4月26日から汚染地域に滞在し,かなりの放射線被曝をうけた.すべての患者に,急性放射線症を特徴づける臨床状態が共通して認められる.われわれのリストの中で,患者クリチェンコの症例はきわだっており,彼のケースは,チェルノブイリ原発周辺30㎞圏内での急性放射線症の典型例と言えるであろう.
放射線被曝症状
放射線被曝症状はつぎに述べる臨床症状に分類される.
1.血液像症状:血球減少症,白血球減少症
2.自律神経失調症
3.神経・循環系失調症
4.咽頭部障害
5.粘液・皮膚のベータ線障害
6. 甲状腺の高レベル被曝
白血球減少症:
9.カルテ7784.(氏名略)女性65歳,アメリコフシチナ村住民.5月12日入院.入院理由:放射能汚染.5月15日の放射線測定:衣服500マイクロレントゲン/時.甲状腺1200マイクロレントゲン/時.血液検査:白血球数2200.5月20日退院.
10.カルテ8011/554.(氏名略)男性21歳,ホイニキ市住民.5月23日,「放射能高汚染地域の滞在,血液検査の変化のため検査入院」.血液検査:白血球2500.甲状腺の放射線量130マイクロレントゲン/時.第1度の急性放射線症に対応する治療:グルコン酸カルシウム,レモン酸,総合ビタミン剤,ミネラル・ウォーター,イゾフェニン,胆汁排出剤.6月2日退院.
11.カルテ№ 8318/604.(氏名略)男性41歳,運転手,ホイニキ市住民.5月13日入院.肝臓の放射線量80マイクロレントゲン/時.甲状腺35マイクロレントゲン/時.血液検査:白血球2300,血小板14.4万.訴え:頭痛.
12.カルテ №7641/318.(氏名略)女性33歳,ポゴンノエ村住民.放射能汚染地域から入院.訴え:中程度の頭痛,口渇,苦味.5月6日の血液検査:白血球2200.5月7日の甲状腺1400マイクロレントゲン/時.
自律神経失調症:
13.カルテ№7868/533.(氏名略)男性64歳,ウラーシ村住民.コルホーズ「新生活」労働者(5月5日ストレリチェボ村へ避難).5月20日地区中央病院入院.入院のときに全身衰弱,眠気,病気ぎみ,腰の痛みに対する訴え.病院へ送られてきた理由は,放射能汚染.居住の村は最高汚染地域.村での甲状腺放射線量は1.9〜2.0ミリレントゲン/時.入院のときの甲状腺放射線量は3ミリレントゲン/時以上.5月27日の血液検査で白血球2900.6月5日退院.
4月26日より5月5日まで患者は,4月28日に300ミリレントゲン/時が記録されているウラーシ村に居住,5月5日より15日までストレリチェボ村に滞在.
14.カルテ№7805/496/539.(氏名略)女性63歳,ノボセルキ村.5月13日入院.入院理由:放射能汚染.放射線量:肝臓1000マイクロレントゲン/時,甲状腺3000マイクロレントゲン/時.患者は3日の間(5月10日より12日まで)原発から65㎞の野外に滞在.頭痛,吐き気,食欲不振,全身衰弱,病気ぎみ,眠気に対する訴え.5月19日の血液検査:白血球3200.5月27日退院.
15.カルテ№7795/491.(氏名略)女性59歳,ノボセルキ村住民.5月13日入院.入院理由:自律神経失調症.5月14日の衣服の放射線,700マイクロレントゲン/時.甲状腺2000マイクロレントゲン/時.頭痛,吐き気,のどのイガラに対する訴え.患者は原発から60㎞の野外で長時間を過ごした.5月21日退院.
16.カルテ№7818/495.(氏名略)女性49歳,ノボセルキ村.5月13日入院.病院へ送られてきた理由は放射能汚染.5月14日の衣服の放射線量900マイクロレントゲン/時,甲状腺3000マイクロレントゲン/時.5月10日に発病の徴候.原発から65㎞の所に滞在.衰弱,吐き気,食欲不振,頭痛に対する訴え.5月21日退院.
17.カルテ№7818/502.(氏名略)女性57歳,ノボセルキ村.5月15日入院.衣服のガンマ線量700マイクロレントゲン/時,甲状腺2600マイクロレントゲン/時.5月19日の血液検査,白血球2900.原発から65㎞の野外に滞在.自宅の家畜の牛のミルクを飲用.頭痛,衰弱,病気ぎみ,心臓部の痛みに対する訴え.
ベータ線による皮膚炎,やけど:
18.カルテ№7587/1060.(氏名略)男性35歳,ベリーキーボル村住民.5月4日入院.顔,手首の放射線やけどのため病院へ送られてきた.身体表面のガンマ線量300マイクロレントゲン/時,甲状腺700マイクロレントゲン/時.不快感,頭痛の訴え.
19.カルテ№7655/461.(氏名略)女性43歳,搾乳婦,ビソーカヤ村住民.5月6日23時入院.放射能による外傷(?),鼻血のため病院へ送られてくる.患者は5月1日より5日まで,チェムコフ村〜ウラーシ村付近で牛の搾乳にたずさわった.5月5日,頭痛,吐き気,鼻血が出現.客観的症状:顔の皮膚,頸,手首の黒っぽい日焼け,頬が充血.血液検査:白血球3000.5月8日無断退院.
20.カルテ№7794/540.(氏名略)女性64歳,ノボセルキ村住民,5月13日入院.入院理由:放射能汚染.衣服のガンマ線1700マイクロレントゲン/時,甲状腺3000マイクロレントゲン/時以上.頭痛,吐き気,上腹部の痛みの訴え.チェルノブイリ原発から60㎞の所に居住.自宅の菜園で働いき,身体の外部に露出した部分が日焼け.5月26日の血液検査:白血球2800.5月29日退院.
神経・循環系失調症:
21.カルテ№8013.(氏名略)女性21歳,ホイニキ市住民.ブラーギン地区の衛生管理センターに勤務.5月23日入院.入院の1週間前から病気の兆候.患者は再三,高放射能汚染地域で働いた.頭頂部の激しい痛み,吐き気,衰弱,関節痛,心臓部の痛み,不眠,食欲欠如に対する訴え.6月2日退院.
22.カルテ№8060/550.(氏名略)女性49歳,ホイニキ市住民.5月23日入院.病気の徴候は5月3日に初めて発生.衰弱,吐き気が生じて,微熱.5月20日体温が39度に上がり,容体が悪化.頭痛,激しい衰弱,不快感,食欲欠如,吐き気,腰痛,頭頂部の痛み,口渇の訴え.
23.カルテ№7806/498.(氏名略)男性67歳,マレシェフ村(ホイニキ市のはずれ).5月14日入院.入院理由:放射能汚染.甲状腺のガンマ線量1700マイクロレントゲン/時.血液検査:白血球2400,血小板10万.衰弱,頭痛,心臓部のうずくような痛みの訴え.5月21日退院.
咽頭部障害:
24.カルテ№7783/512.(氏名略)男性50歳,ボルシチェフカ村.5月12日放射能汚染の理由で入院.甲状腺のガンマ線量3000マイクロレントゲン/時以上.頭痛,から咳,気管入口のイガラの訴え.検査結果:口腔・咽頭粘膜の明白な充血.5月23日退院.
25.カルテ№7785/490.(氏名略),女性47歳,ネビトフ村.5月13日入院.理由:放射能汚染.原発から65kmの所に滞在.ソフホーズで働く.身体の露出した部分が日焼け.頭痛,衰弱,皮膜のむずがゆさ,口の焼けるようなひりひりした痛み,から咳に対する訴え.甲状腺放射線量300マイクロレントゲン/時. 血液検査:白血球2800,血小板14万.
26.カルテ№ 3637/363.(氏名略)女性36歳,ポゴンノエ村.5月5日入院.血液検査:白血球3400.甲状腺放射線量1400マイクロレントゲン/時.痛み,のどのイガラ,刺激感.5月12日退院.
甲状腺の高レベル被曝:
27.カルテ№8239/588.(氏名略)男性57歳,ロマチ村,巡回警備員.5月14日入院.甲状腺からのガンマ線量16ミリレントゲン/時.全身衰弱,口渇,頭痛の訴え.6月14日退院.
28.カルテ№8011/554.(氏名略)男性21歳,ホイニキ市住民.5月23日,医療衛生隊救護所から「放射線レベル測定不能(?)」との理由で転送されてくる.甲状腺のガンマ線量13ミリレントゲン/時.血液検査:白血球2500.
まとめ
チェルノブイリ原発周辺の住民に急性放射線症がなかったという,IAEA(国際原子力機関),赤十字,WHO(世界保健機関)その他の見解を論理的に否定するためには,1件の症例(患者クリチェンコ)をあげれば十分である.しかし,患者クリチェンコのケースが単独で発生していたわけではない.もしボルシチェフカ村住民の1%に急性放射線症があったとすれば,マサーニ村,ウラーシ村などでは,その割合はもっと大きかったはずである.ホイニキ地区の30㎞圏からは5200人が避難したが,30㎞圏全体では10万人以上が避難した.われわれは1000件以上の急性放射線症があったと考えねばならない.
これまでに明らかにされたデータは,1986年4月26日から27日にかけて放射線レベルが非常に高かったことを物語っている.この2日の間に,(野外での労働とか日光浴といった)特定の条件にあった人々は,100から300レムにも及ぶ被曝をうけることになった.休日(4月26日と27日)を過ごすために来ていた人々を加えると,その2日間に30㎞圏内で被曝した人々の数は,そこで暮らしていた住民の数よりかなり多かったことも明らかである.
さらに,4月26日,27日の非常に強烈な放射線状況は,30㎞圏から遠く離れた地域まで,とりわけ,日光浴をしたり自宅の菜園で働いたりしながら野外に長くいた人々がかなりの被曝をうけた可能性を示している.
1986年の4月から6月にかけて記録されたベラルーシ住民の病気とその特殊性を分析するにあたって,われわれはこうした要因を考慮する必要がある.
文献
1. V. Lupandin, "Invisible Victims", NABAT 36, October 1992. (和訳:「隠れた犠牲者たち」,技術と人間,1993年4月号)
2. 広河隆一,「チェルノブイリ:失われた医療記録」,現代,1993年9月号.
3. Los Angeles Times, April 14, 1992.
引用ここまで
原文は、こちらです。
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/saigai/Lupan-j.html
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「鼻血、出てませんか?」の参考記事にさせていただきました。
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