揺らぐ再稼働 —原発ゼロ 東北から問う(上)反発/「安全誰が信じるのか」
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福井県敦賀市長ら原発立地市町村長らと枝野経産相(右)を訪ねた井戸川町長(左)=4月9日
国内の商業用原発で唯一運転していた北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が5日、定期検査のため停止する。50年近い日本の原発の歴史で、異例の「原発ゼロ」状態となる。焦る政府は関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を急ぐが、福島第1原発事故の爪痕は深く、反発は強い。原子力施設に地域の未来を託す青森県などは不安を募らせる。原発再稼働はどうなるのか。東北の実情を追い、課題を探った。(原子力問題取材班)
◎検証途上政府に不信
「再稼働は危うい」
4月9日、東京・霞が関の経済産業省。福島県双葉町の井戸川克隆町長が枝野幸男経産相への要望を終えた後、こう本音を漏らした。
全国の原発立地市町村の首長ら13人が顔をそろえ、福島第1原発事故を受けた被災地支援や防災体制強化を求めた。大飯原発への政府の対応が急展開するさなかであり、話題は自然にそちらに向かう。
<冷めた町長>
枝野氏の意向を確かめたい首長らの中で、井戸川氏は冷めていた。
福島第1原発が立地する双葉町は約7000人の全町民が避難し、仮役場を埼玉県に設けた。
「こんな目に遭わせて…。事故を起こしたままの体制で、安全と言っても誰が信じるのか」。井戸川氏には、あきらめといらだちがにじんだ。
この日、関西電力が大飯原発の安全対策工程表を枝野氏に提出。政府は安全基準に「おおむね適合している」として同日中に工程表を了承した。原発がないと関電管内でピーク需要に対し供給力が19.6%不足し、火力発電の燃料コストが増加するとの試算も示した。
「経済性ありきで、国民の命を無視した話だ」、「事故の検証を優先してほしい」。福島県の原発立地地域の住民からは厳しい声が飛ぶ。
国会の事故調査委員会が4月21、22日、会津若松市などで避難者を対象に開いたタウンミーティングで大飯原発の政府対応をめぐり批判が相次いだ。
同市に避難しながら委員を務める福島県大熊町商工会長の蜂須賀礼子さんは「再稼働はまだ早い。私たちのような避難者が再び出るとつらい」と、住民のいらだちを代弁した。
<被害広範に>
福島の事故は、原発事故の被害が立地地域だけでなく、広範にわたることを証明した。大飯原発の問題では、地元の福井県に隣接する京都府や滋賀県が異を唱え、大阪府・市も「原発100キロ圏内の都道府県との安全協定締結」を再稼働条件の一つに挙げている。
東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)から「100キロ圏」には岩手県南も含まれる。達増拓也岩手県知事は「安全だと思っても事故は起きるというのが福島の教訓。その時にどう収束するか、どう命を守るかが先に来るべきだ」と指摘する。
福島県からの避難者が約1万3000人と全国で最も多い山形県の吉村美栄子知事も、政府の動きを「性急」と述べ、「福島事故の検証が終了し、それを踏まえてあらゆるリスクへの安全対策が講じられることが必要」と強調する。
東北でも反発が強いのは、新たな原子力規制組織すら発足できない中で、再稼働を急ぐ政府への不信があるからだ。そこには、未曽有の原子力災害が忘れ去られることへの危機感が重なる。
佐藤雄平福島県知事が4月12日、報道陣から政府対応への認識を問われ、言い放った。「被災県としてじくじたる思いだ。原発事故は進行中。事故の厳しい実態を分かっているのだろうか」
政府はその翌日、大飯原発の再稼働を「妥当」と判断した。
2012年05月04日金曜日
揺らぐ再稼働 —原発ゼロ 東北から問う(中)警戒/青森国策転換けん制
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使用済み核燃料再処理工場には、各地の原発から大量の使用済み燃料が運び込まれている
青森県下北地方5市町村の首長らが集う会議で、タブーとされてきた言葉が飛び交った。
むつ市で4月24日に開かれた下北総合開発期成同盟会。大間町の石戸秀雄議長が「避難道の整備が遅々として進まない。このままでは地元の理解を得られない」と訴えると、賛同意見が続いた。
大間町では電源開発大間原発の建設が中断している。運転停止中の東北電力東通原発1号機(東通村)の再稼働を意識した発言だ。
<タブー一変>
あってはならない原子力災害を想起させる、という理由から「避難道」の議論は避けられてきた。それを一変させたのが福島第1原発事故だ。
下北半島は原子力関連施設が集中立地するが、半島を南北に通る幹線道路は幅の狭い国道2本だけ。災害で寸断されれば孤立する恐れもある。避難道とされた下北半島縦貫道の建設は計画の2割しか進んでいない。
「原子力安全神話は崩れた」。むつ市の宮下順一郎市長はこう言い切り、避難道の早期整備による安全確保を訴える。
福島の事故後、下北でも風向きが変わった。だが、原子力と密接にかかわってきた青森県の自治体が、脱原発に転換したわけではない。
「エネルギーを維持するのに原発の再稼働はやはり必要だ」と東通村の越善靖夫村長は言う。
電源立地3法交付金や固定資産税収入を財源に建てた施設の一つとして、この春、村内の幼稚園・保育園を統合した「こども園」がオープンした。教育の充実や子育て世代の定着に、こうした財源は今後も欠かせない。
関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働をめぐる論議では、電力消費地の声が強調され、供給地が置き去りにされていると感じる。「地域として国策に協力し、エネルギー生産地であることに村民は自負を持っている」と語り、立地自治体への配慮を求める。
北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が5日に定期検査に入り、国内の全原発が停止状態となる。六ケ所村は「原発ゼロ」が試運転中の日本原燃の使用済み核燃料再処理工場へ及ぼす影響を注視する。
<たまる一方>
再処理工場で使用済み核燃料から取り出すプルトニウムは、ウランと混ぜて原発で燃やす「プルサーマル」で使う。原発が動かなければ、足踏みを迫られる。貯蔵プールには、各地の原発から運び込まれる使用済み核燃料がたまる一方だ。
青森県は「エネルギーの安定供給は極めて大事。ぶれのない国家戦略を打ちだしてほしい」(三村申吾知事)との姿勢。六ケ所村の古川健治村長は「再処理工場を抱える村として、原発の再稼働は必要だ」と言う。
風向きの変化を警戒し、国策変更の動きをけん制する。
一方、東北電力女川原発が立地する宮城県女川町は、東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた。須田善明町長は「まだ再稼働を議論する段階にない」と語る。
その上で「運転停止が長期化すれば、雇用が大変になる」と懸念し、「防災計画の見直しが必要になる。避難路の整備を国が行うべきだ」と国に注文を付ける。
2012年05月05日土曜日
揺らぐ再稼働 —原発ゼロ 東北から問う(下)不安/安全対策、政府先送り
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佐藤知事(左)に提言書の内容を説明する嘉田知事(中央)=4月18日、福島県庁
関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働には、隣県から反対の声が上がった。
渦中の一人、嘉田由紀子滋賀県知事が4月18日、福島県庁に佐藤雄平知事を訪ねた。津波被災地に植えるマツの種の寄贈という本題もそこそこに、嘉田氏は京都府と共同で前日発表した提言書を差し出した。
提言書は、福島第1原発事故の教訓を徹底的に踏まえた安全対策の構築などを政府に求めた。
「福島の1年は何だったのか。犠牲を無にしてはいけないという気持ちでまとめた」と嘉田知事。佐藤知事は「同じ思いだ」と賛意を示した。
<滋賀も30キロ圏>
国の原子力安全委員会は3月、防災重点地域を原発の8〜10キロ圏から30キロ圏に拡大し、30キロ圏を事故の進展に応じ避難する「緊急防護措置区域(UPZ)」に設定した。原発と無縁だった滋賀県も30キロ圏に含まれ、「万が一の時はいや応なく被害を受ける」(嘉田氏)と意識を一変させた。
不安と危機感が広がったのは、大飯原発の周辺に限らない。
「事故が起きれば地域の存亡に関わる」。宮城県美里町議会は3月、東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に反対する意見書を可決した。美里町はUPZに該当する。
佐々木功悦町長は議会と歩調を合わせるように「福島で多くの人が苦しんだ現実を直視すべきだ。経済性ではなく、住民の安全を守るという視点が重要」と訴える。
宮城県内では登米、岩沼、名取の各市議会も、脱原発や女川原発の再稼働に慎重な対応を求める意見書を可決した。
安全対策の工程表が安全基準におおむね適合したとして、政府は大飯原発再稼働に踏み出した。
しかし、事故時の収束作業の拠点となる免震重要棟建設や、住民の避難計画を含む防災対策など先送りした課題が多い。福島事故で全く機能しなかった原子力災害対応拠点「オフサイトセンター」の見直しも不透明だ。
原子力安全委の業務を引き継ぎ、4月に発足予定だった原子力規制庁は、関連法案審議の遅れで設置のめどすら立っていない。この影響で四国電力伊方原発(愛媛県)の再稼働に向けた安全評価は、宙に浮いている。
宮城県の防災計画改定に携わった若林利男東北大名誉教授(リスク評価・管理学)は「国民の信頼を得られるような独立性の高い原子力規制庁は早期に整備すべきだ」と主張する。
<「空白の1年」>
規制組織が発足しないと防災指針作りも進まず、宮野廣法大大学院客員教授(システム工学)も「規制の空白は作ってはいけない」と指摘する。
事故を前提とした対策の必要性を挙げ「原発立地地域に具体的な事故のリスクを説明し、避難訓練を行うなど地域の防災が何より大事なのに、政府はこの1年何をやってきたのか」と嘆く。
「再稼働判断に福島の事故の反省は生かされたのか」「住民は安全に避難できるのか」
4月18日に都内であった国会の事故調査委員会。委員の畳み掛ける質問に、参考人として呼ばれた経済産業省原子力安全・保安院の深野弘行院長は、時折答えに窮した。
終了後の記者会見で、黒川清委員長(元日本学術会議会長)は「安全に稼働するために必要な対策が先送りされている」と指摘した上で、疑義を呈した。「住民の健康・安全を最優先に多層の安全対策をすべきではないか。政府の判断基準は原発の安全を確保するに十分なものなのか」
2012年05月06日日曜日
引用ここまで
原文は、河北新報 ニュースサイトの中の
【揺らぐ再稼働 —原発ゼロ 東北から問う(上)反発/「安全誰が信じるのか」】
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1090/20120505_05.htm
【揺らぐ再稼働 —原発ゼロ 東北から問う(中)警戒/青森国策転換けん制】
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1090/20120505_06.htm
【揺らぐ再稼働 —原発ゼロ 東北から問う(下)不安/安全対策、政府先送り】
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1090/20120506_01.htm
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「早く電力自由化を」
の参考記事にさせていただきました。