2012年6月8日金曜日

政治家が原発の安全性を判断することの愚

引用ここから

政治家が原発の安全性を判断することの愚
Business Media 誠 4月23日(月)11時19分配信

 4月18日、原子力事故に関する国会 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(以下、国会事故調)を取材した。この日の参考人は原子力安全・保安院の深野弘行院長である。過去の委員会では、元院長である広瀬研吉氏や事故当時に院長であった寺坂信昭氏も参考人として呼ばれている。

国会事故調 第9回委員会 2012/04/18

 この日の委員会では、原発再稼働に関連する質問が多かった。現在、野田内閣は定期点検などで停止している原子力発電所を再稼働させようとしている。当面の焦点は関西電力大飯3号機と4号機だ。

 この委員会の10日ほど前になる4月6日、野田首相、藤村官房長官、枝野経産相、細野特命大臣の4閣僚は「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」を発表した。内容を簡単に言うと、「津波による全電源喪失」が事故の要因であり、地震や経年劣化は原因とは考えにくいというのが基本認識だ。

 そして再稼働させるための条件として3つの基準を挙げた。1つは、所内電源設備対策、冷却・注水設備対策、格納容器破損対策、管理・計装設備対策からなる基準、2つ目はストレステストで確認しているとする基準、さらに電力会社が「さらなる安全性・信頼性向上のための対策の着実な実施計画が事業者により明らかにされていること」を基準である。これらの基準を満たしていることが再稼働の条件となるわけだ。

 これに先立つ3月28日に保安院は「東京電力福島第一原子力発電所事故の技術的知見について」と題する文書を発表し、そこで30項目からなる対策を列挙した。例えば、発電所内電気設備の位置を分散させるとか、浸水対策を強化するとか、外部からの給電(電源車)の容易化とかいった具合だ。

 ところがこの30項目の対策のうち、関係4閣僚が実施していなければならないとしたのは15項目である。つまり、残りの15項目については電力会社が「実行」を約束して行程表を提出すればいいということにした。例えば重要免震棟の設置や、ベントする時に放射性物質を出さないためのフィルターの設置などだ。

●保安院の問題とは

 ここまでの経過で問題は3つあると思う。第一は、事故原因を津波による全電源喪失に限ってしまったように見えることだ。これまでのところ、地震によって損傷を受けたとは考えにくいとしているが、それはあくまでも「推測」でしかない。最終的には1〜3号機を徹底的に検証してみなければ分からないとする専門家も多いのに、やや拙速ぎみに事故原因を津波に限定してしまった。

 第二は、保安院が策定した30項目の対策のうち、再稼働前に実施していなければならないのは15項目というように限定したことである。そして深野院長は、誰が責任をもってこの30項目を15項目にしたのかということをついに明確に発言しなかった。恐らくは政治の意図を忖度(そんたく)して保安院が最低この15項目で安全性はそれなりに確保されていると進言したという経緯なのだろう。すなわち、安全性の確保が政治的になされたということである。

 第三は、保安院は原子力規制官庁として生まれ変わることなく、相変わらず、政治の行くところを忖度しているように見えるという問題だ。本来、規制官庁としての役割を果たそうと思えば、安全上必要と考える条件について妥協はしない。それは原子力の安全を国民から負託されている官庁として「背信行為」になるからだ。自分の職を賭してでも、条件を緩めることに抵抗することが求められている。もちろん保安院がそういう立場にならないように(つまり原子力推進の障害にならないように)経産相は利益相反という批判を無視して保安院を独立規制庁とせずに自分たちの中に取り込んだという経緯がある。

 それでも3.11を経験し、世界でも最悪の部類に入る原子力事故を起こしてしまった以上、そして原子力規制庁に衣替えすることが決まっている(法律的はまだ成立していないが)以上、保安院としての意識の変化があるべきだと考える。深野院長も意識改革については言及していたが、この再稼働をめぐる保安院の立場を追及されて、意識変革はまだまだ道のりが遠いと思わせてしまった。

●政治家が安全であると判断したのは問題

 ただ一番重要な問題は、政治家が安全であると判断したことだと思う。本来、安全性の問題は政治的に判断すべきことではない。さまざまなデータに基づいて、リスクが十分に小さいことを専門家が判断するというのが筋である。それでも100%安全ということはないから、政治家がそれを国民に説明し、国民を「安心」させるというプロセスが必要だ。

 それなのに、今回の再稼働問題は専門家による判断を仰がないままに(内閣府に置かれている原子力安全委員会は判断していない)、政治家が決めてしまった。フクシマの1つの大きな問題は、想定外のことは起こりえないという神話に専門家、政治家、官僚そして国民もどっぷりと浸かっていたことだ。それを正すには、リスクをどう考えるのかということをもっと国民的に議論しなくてはならない。なぜならば、従来とは安全に対する考え方をすっかり変えなければならない時には、それこそ国民的な広がりのある議論が必要だからだ。

 そこまでせずに電力不足で「集団自殺」などという根拠のない脅しまで使って「再起動まっしぐら」というのでは、それこそ野田内閣自体がメルトダウンしてしまうことにもなりかねないと思う。

[藤田正美,Business Media 誠]


引用ここまで

原文は、 

『YAHOO!JAPANニュース』【政治家が原発の安全性を判断することの愚】
  http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120423-00000029-zdn_mkt-ind
『Business Media 誠』【政治家が原発の安全性を判断することの愚】
 http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1204/23/news008.html
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。

ひなげし陽気』の中の「停電の怖さ
の参考記事にさせていただきました。