<災害対策・第21報>福島第一原子力発電所事故に関する見解
2011/04/07
生活クラブ連合会緊急対策本部
福島第一原発事故は、状況が改善されないまま、ついに水産物の放射能検出にまで及んでいます。こうした事態をふまえ、生活クラブ連合会の緊急対策本部では、3月23日の連合理事会ですでに決定した今回の問題に関わる対応方針を明確化、ないし補強する必要があると判断しました。生活クラブ連合会緊急対策本部
ただし、以下の見解は「緊急対策本部」の暫定的な対処方針ですので、今後連合理事会での討議・決定をもって生活クラブ連合会としての方針をより明確に確定して、あらためて組織内外に明らかにします。
また、今後の状況の推移によっては基本的な方針をあらためて策定することや、放射能に関する生活クラブの自主基準について、組織内外の議論ふまえつつ、中期的な対応策を策定する準備を始めます。
1.福島第一原発事故に伴う暫定的運用方針
| (1)なぜ「国の暫定基準」運用か |
1. 福島第一原発事故による放射能汚染が、東日本(東北・北関東)に広がる中で、生活クラブの自主基準(37ベクレル)<注1>を徹底することは、生活クラブが取り組む食品のすべてを検査したうえで組合員に供給することを意味します。しかし、検査機関の不足、検査結果が分かるまでの時間の問題などがあり、その徹底は今回の事態のなかでは物理的に不可能です<注2>。
2. もし自主基準の運用を徹底するならば、自主基準値以下にあるとみなされる産地や生産者のものをピックアップして取り組む、それ以外は取り組まない、極端に言えば輸入品の取り組みも検討する、ということになります。しかし、これは生活クラブが40数年にわたって積み上げ大切にしてきた生産者との提携関係の放棄を意味します。東北・北関東には、生活クラブが「主要品目」と位置づけてきた提携生産者が多数存在しています。生活クラブの共同購入は、これらの地域との関係なしには成立しなかったわけで、この提携関係の維持・強化は生活クラブにとっても重要な課題です。しかも、この地域の大震災による被害からの復旧・復興が喫緊の課題であるいま、提携関係の維持・強化は決定的に重要な課題になります。
3. 生活クラブでは、2007年に意志ある団体と連携して「『六ヶ所再処理工場』に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク」(略称「阻止ネット」)<注3>を結成し、青森県六ケ所村の核燃料再処理施設から放出される放射能問題に対処するため、検査結果の公開とそれに基づく取組み基準を「37ベクレル」とした経緯があります。しかしその際も、その運用にあたっては、「風評被害」による再処理工場周辺の生産者への影響を十二分に配慮し、生産者とともに行動することを確認しています。しかし、すでに述べたように、自主基準「37ベクレル」の運用は不可能な事態にあります。そのようななかでも、生産者との連携・連帯は維持されるべきものと考えます。<注4>
4. 以上の諸点をふまえ、今回の福島第一原発事故に関する対応では、自主基準は運用せず、「国の暫定基準」に基づく運用方針の採用をやむを得ない対応策とします。とはいえ、国の暫定基準値以下であるからよいとする態度ではなく、刻々と変化する事態と情報が錯綜する中にあって、その都度リスク回避のための努力に留意します。そのためにも、私たちができうる範囲での自主検査と、それに基づく運用(情報公開)を今回の事態における暫定的運用の基本とします。
<脚注>
○ <注1>生活クラブ自主基準値(37ベクレル)制定の経過
チェルノブイリ原発事故(1986年)のとき、生活クラブは自主基準値37ベクレル/kg(国の基準値の10分の1)を超えた「パスタ類」と「わたらい茶」の供給を止めました。パスタ類は輸入品だったので、国産パスタの生産者と提携をしていくことになりました。わたらい茶の供給停止は、組合員も生産者も議論に議論を重ねた上での決断でした。全くの被害者である生産者の痛みを組合員がしっかりと受け止めて、翌年度のわたらい茶の共同購入を盛り上げていきました。
当時の対応は、事故原発(旧ソ連ウクライナ)が8000㎞と離れていたために、原料産地や対象品目を限定することのできる、通常の暮らしのなかでの放射性防護を念頭においたものでした。今回は私たちは原発事故現場の「圏内」ともいえる範囲に暮らしており、当然対応の前提が異なります。
○ <注2>検査の限界性(消費材・一般商品共通)
放射能検査は流通する食品から任意のサンプル(検体)を対象に実施するものです。そのため検査から分かることは、検体が所属していた母集団の一般的傾向を「推察」する参考情報のひとつにすぎません。すべての食品個体を検査することは物理的に不可能です。
放射能検査にはほかにも以下のようなさまざまな限界があります。そのことを踏まえて数値結果を受け止めるようにしてください。
〇「サンプル検査」の結果数値の意味: 検査した検体の結果を知ることはできますが、同じ消費材(商品)が同じ数値である保証はありません。
〇検査機関の限界: 一般的な理化学検査機関のすべてが放射能検査を行えるわけではありません。公的検査機関((財)日本食品分析センター等)には現在検査依頼が殺到しており、結果が出るまでに時間を要しています。また生活クラブが主に依頼する「放射能汚染食品測定室」で測定できる核種は「セシウム -137、-134」と「ヨウ素-131」のみです。
〇検査費用の限界: 1検体あたりの検査費用は「(財)日本食品分析センター」で2万5千円、「放射能汚染食品測定室」で7,000円です。検査頻度・品目数を増やせば検査費用も増えますので、民間事業体である生活クラブが際限なく検査数を増やすことはできません。
〇検査時間の限界: 検体提出後結果が出るまで通常要する時間は「(財)日本食品分析センター」で8営業日、「放射能汚染食品測定室」は1営業日です。消費期限の短い生鮮食品は検査結果が分かったときには消費が終了している可能性があります。
○ <注3>「『六ヶ所再処理工場』に反対し放射能汚染を阻止する全国ネットワーク」(阻止ネット)
1) 目的と運動方針(2007年7月「キックオフ宣言」より)
「六ヶ所再処理工場」の本格稼動に反対し、その中止を求め、
〇放射能汚染による風評被害や実被害を発生させないように行動する決意を表明します。
〇自主的に放射能汚染を監視し、自然環境や第一次産業を守り育てることを宣言します。
〇私たちは、生産者と連携し、産地と消費者をつなげ続けていくことを宣言します。
〇「六ヶ所再処理工場」による空と海の放射能汚染に反対し、豊かな自然環境と生命と食べ物を守る運動の大きなうねりを、ともに創ることを呼びかけます。
2) これまでの活動
賛同団体・個人を募り632団体・個人(10年8月時点)に。「六ヶ所再処理工場の本格稼動に反対し、その中止を求める」署名活動。岩手県内6漁協の「豊かな自然を放射能で汚さないでください」という署名も一緒に取組み。内閣総理大臣ほか宛の「メッセージカード」の頒布。集会等開催、東京・青森で毎年開催。車両用マグネットシートを作成し頒布。六ヶ所再処理工場近辺の放射能を自主測定、結果を呼びかけ団体提携生産者・阻止ネット賛同団体に報告した(2009年、2010年)。
3) 呼びかけ団体
生活協同組合あいコープみやぎ、グリーンコープ共同体、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、大地を守る会、特定非営利活動法人日本消費者連盟、パルシステム生活協同組合連合会
http://www.soshinet.org/
○ <注4>「生活クラブは生産者偏重ではないか?」
放射能基準値の独自基準の適用を一次停止し「国の暫定基準値」を採用することについて、「風評被害への懸念は分かるが生産者利益に偏りすぎではないか?」いう意見もあります。
そもそも生活クラブ自主基準は、世の中の同種の環境基準の考え方とは大きく異なる面があります。つまり、自主基準を達成する生産者だけを選別し、達成できない生産者を排除することによって作られたものではないということです。生活クラブ組合員と生産者のねばり強いつながりのなかで、生産者がひとつずつ達成していくことで、相互に達成レベルを確認しながら基準自体も少しずつレベルアップさせてきました。生活クラブの現在は組合員だけのものでも、生産者だけのものでもなく、両者のつながりによって時間をかけて育まれてきたものです。
提携生産者との信頼関係を維持できれば、放射能食品汚染についても、再び一から自主基準を作り上げていくことができます。他方これまでの東日本の提携生産者と決別し、時間の蓄積を省略して「より安全な食物」を提供してくれる「取引先」を他に求めるという選択もあるでしょう。しかし「輸入」を含めて食料確保自体が不安定になるであろう今後の国外・国内情勢のなかで、信頼関係という替えがたい財産を維持する選択のほうが、長期的に見て消費者である組合員の「利益」にもかなう道であると考えます。
引用ここまで
原文は、生活クラブ サイトの中の
【 <災害対策・第21報>福島第一原子力発電所事故に関する見解
1.福島第一原発事故に伴う暫定的運用方針
(1)なぜ「国の暫定基準」運用か 】
http://www.seikatsuclub.coop/coop/news/20110407_a.html
です。
アクセスが急増したり万一記事削除されて読めなくなったときのため、ここにコピペ保存しています。
『ひなげし陽気』の中の「お茶から放射性物質 2」の参考記事にさせていただきました。